プロジェクトファインディング
海外の農業農村整備協力を行う場合、優良プロジェクトの発掘・選定は、海外協力の実効を上げる鍵であり、成功させるための第1条件であります。
また、海外農業農村整備協力を積極的に推進しようとするならば、相手国からの要請を待つだけでなく、進んで自らもプロジェクトの発掘に努める必要があります。
開発途上国においては、なお広大な開発可能地が残されており、開発の必要性の認識や意欲が高まっているにもかかわらず、技術力の問題や経済力の限界などのため、開発プロジェクトの選定が遅れたり、適切でなかったりして、なかなか円滑に進まないのが実情です。
わが国の海外農業農村整備協力は、二国間の政府間交渉により正式に取り上げられることとなりますが、この場合、相手国政府からの協力要請があることがその前提であり、わが国政府は、この公式要請を受けて始動することとなります。
プロジェクト・ファインディングとは、この二国間の政府で話がはじまる前に、開発途上国からの要請等に基づき特定の地域における協力の可能性について調査を行うもので、その後に続く政府ベ一スの交渉を効果的に進めて、速やかに実現を図ろうとするためのものです。したがって、このプロジェクト・ファインディングは、その後に続く政府間交渉に密接に関係しますから、大変重要な意味をもつものであります。
政府は、この必要性と重要性を認識し、当協会の行うプロジェクト・ファインディングに対し、昭和52年度から平成22年度まで補助金等を交付していました。平成23年度からはADCAの海外農業開発調査基金によるプロジェクトファインディングを行っています。
プロジェクト・ファインディングの方法を図解して説明すれば、次のとおりです。
フィージビリティ調査
プロジェクト・ファインディングの結果、その勧告と助言により二国間の政府の話し合いが始まり、合意に達すると開発調査に着手することとなります。
農業農村整備調査には、総合開発計画や長期開発計画等のマスタープランと並んで重要な調査として、特定プロジェクトを実施するためのフィージビリティ調査が行われます。
この調査は、そのプロジェクトの技術的可能性と経済的妥当性等を明らかにするための調査です。プロジェクト地域の自然と社会経済の現況を明らかにし、土地と水の利用計画と営農及び施設計画を樹て、経済効果の判定を行うものであります。
また、近年における開発戦略や手法が多様化し、環境保全、貧困対策、住民参加、あるいは開発と女性等、従来のフィージビリティ調査の中ではあまり触れられなかった事項も調査対象として含まれることがあります。
一般に、この調査は二国間のグラント(贈与)として扱われ、JICA所管の技術協力のなかで実施されます。調査の各種作業は、ADCAあるいはADCA会員のコンサルタントと現地技術者が共同で進め、技術移転を図りつつ、またJICAが行う研修の成果を合せ妥当な開発計画をまとめ上げるものであります。
開発計画は、報告書として、両国政府に提出され、JBIC等の二国間あるいは国際金融機関の借款対象事業として事業着手されるのが通例であります。
研修事業
JICAが実施する技術協力には『専門家派遣』『機材供与』『研修員受入』と、それらを適切に融合した形の『技術協力プロジェクト』および開発調査のOJTとも言える『開発計画調査型技術協力』があります。『研修員受入』事業のほとんどは日本国内で実施されます。毎年多くの国から1万人以上の研修員が、様々な分野の知識・技術を身につけるために来日し、知識・技術の他に他国の人々への理解と共に帰国します。帰国研修員には、国境を越えた彼ら自身の視点に基づいた彼ら自身による、それぞれの母国の開発プロセスへの貢献が期待されます。
これらの研修コースは、期間の長さ、技術分野、研修員の職位、実施機関、研修員の受益者の分布など、様々な特徴によって分類できます。『研修・対話プログラム』は日本が途上国にプロポーザルを発出し、応募があった場合にのみ実施されます。このスキームは被援助国のリクエストではなく援助国のプロポーザルにより開始されるという点において政府開発援助(ODA)
の活動としては稀なものです。現在、ADCAは3つの研修コースを受託・実施しています。
『国別特設研修・対話プロジェクト』は途上国からの具体的なリクエストにより実施されます。『技術協力プロジェクト』がそのカウンターパートを研修員として日本に派遣する『カウンターパート研修』のほとんどは、ここに分類されます。会員企業の要請に従い、ADCAはこの種の研修をサポートします。
講演会・セミナー・勉強会
講演会では国際協力関係者(JICA等国際協力実施機関、大学等研究機関、コンサルタント、ゼネコン、NGO
等)に国際協力に関する様々なトピックを講演頂き、世界の農業農村開発の今後の可能性および方向性について共に考えてきました。
セミナーでは国際協力関係者のみならず、一般の方や学生など幅広い分野方々に、世界の食料・貧困問題および我が国の貢献と具体的な手法を広く発信してきました。また参加者に対して、講演や協力事例報告、パネルディスカッションを通じて、世界における農業や食料事情を提供し、我が国のODAにおける農業農村開発への理解を促進させることを目的に実施してきました。
ADCA会員社の若手技術者で組織されるADCA青年会議が主催する勉強会では、コンサルタントが知識を深めたいと感じている分野に関して有識者をまねき、講演や意見交換、または研修を行っています。
講演会(トピックの例)
- CDMを活用した農業農村開発
- 海外農業投資をめぐる事情
- 農業農村開発の最近の課題
- 農産物貿易交渉とTPP
- アフリカの可能性と課題
- マイクロ水力発電と蓄電器による農村地域への電力供給
- 中国農村の変貌
- 世界銀行グループの紹介およびプロジェクトデーターの入手方法
セミナー
- 農業農村開発による世界の食料安全保障への貢献
- 農業農村開発と国際貢献
- 途上国農村における生活向上への多様なアプローチ
- 海外農業農村開発に求められる人材
ADCA青年会議勉強会・意見交換会(トピックの例)
- コミュニティベースの農村地域防災力向上
- バイオエタノール製造実証事業について
- 海外農業農村開発における官民の役割
- FAOSTAT勉強会
- ODAにおけるリモートセンシング活用の可能性
- 農業実践研修:野菜栽培における床土の作成と播種育苗のコツ
- 意見交換会:農業・農村開発分野での海外技術協力における今後の方向性等
- 意見交換会:「東日本大震災からの復興と農業・農村開発ODAの直近〜中期的な活動の方向性」
こうした講演会やセミナー、勉強会は会員企業
のみを対象としたものもありますが、一部は個人賛助会員の皆様にもご参加いただいております。個人賛助会員としての入会をご希望の方はこちら
をご覧ください。
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