No.54 1999.7
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●●トピックス●●●
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ADCA活動記録
<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成11年4〜6月>
ネパール コシ西部地域灌漑施設改修・維持管理強化計画
ネパール テライ地域農業用地下水開発機材整備計画
ネパール 極西部中山間地域貧困緩和・食糧増産計画
フィリピン 国営灌漑地区水利組合強化計画
ケニア カジアド地区小規模灌漑・農村活性化計画
マラウィ 流域管理型小規模灌漑・農村開発計画
エジプト 農民組織育成型農産物流通改善計画
フィリピン 灌漑用建設機械等設備計画
ミャンマー 都市周辺地域農業基盤整備計画
イラン ゴレスタン州ゴルガン平野灌漑排水システム改修計画
イラン チャブハール地区農業開発計画
イラン ケルマンシャー州排水改良計画
アゼルバイジャン 農地整備用機材整備計画
ブルキナ・ファソ 農村環境整備計画
モロッコ 北部農村地域開発計画
象牙海岸 農村環境整備計画
シリア 灌漑技術モデル実証圃場計画
インド ケララ州イドウキ市農村・農業総合開発計画
インド カーヴェリ地区農業用水・水管理システム近代化計画
ブータン 東部地域農業総合開発計画
タンザニア 持続可能な農村開発のための総合的土地・水管理プログラム
カザフスタン アルマティ州農産物生産基盤・流通システム整備計画
カザフスタン 首都近郊農業開発計画
カザフスタン コクサライ・ダム灌漑農業開発計画
ウズベキスタン フェルガナ盆地総合農業・農村開発計画
トルクメニスタン トルクメニスタン農業大学農業訓練センター設立計画
トルクメニスタン 農業情報センター設立計画
中国 陝西省楊凌地区節水灌漑モデル圃場建設計画
ホンデュラス 小規模既存灌漑地域農業多様化計画
グァテマラ 中・西部高原地域農林業技術開発強化計画
ベトナム クワンチー省ダクロン地区農村総合開発計画
ラオス ラオス南部セバンヒアン川流域農業総合開発計画
中国 黒龍江省松嫩平原農業復旧・保全計画
中国 内蒙古自治区烏蘭察布盟砂漠化防止生態農業建設計画

<第3次フィリピン国別援助研究会公開研究会>
 3月31日、JICA国際協力研修所に於いて、第3次フィリピン国別援助研究会の公開研究会が開催されました。農業分野での援助のあり方としては、貧困緩和、農村開発の推進、都市貧困層への支援が取り上げられており、継続課題としては、政府灌漑施設の効率的運営、生産性向上と国際競争力強化についてまとめられています。

<外務省とコンサルタント協会との懇談>
 4月15日、外務省会議室に於いて外務省幹部とコンサルタント関係協会との懇談会が開催されました。今回の議題は、i)特別円借款の調達条件について、ii)DACにおけるLLDC向け援助のアンタイド化問題について、iii)JICA機構改革について関係課から説明がありました。

<J1CA派遣専門家説明会>
 4月27日、農林水産省会議室に於いて5月から7月にかけて派遣される予定のJICA専門家13名に対して説明会が開催されました。当日は、農水省海外土地改良技術室、農業土木総合研究所、農用地整備公団及びADCAからそれぞれの業務概要を説明するとともに、ADCAとして特に現地からの情報提供等についてお願いをしました。

<外務省ODA事業不正防止説明会>
 5月12日、外務省に於いてODA事業における不正防止にかかる説明会が開催されました。説明会では、「ODA事業における不正防止に係る政府の取り組み」、「国際諸取引における外国公務員に対する贈賄防止条約」、「不正競争防止法」、「OECF調達ガイドライン等について」、「無償資金協力の適正実施確保のための改善措置」の概要について説明がありました。


トピックス
「RRA(簡易農村調査法)入門」
「PRA(参加型農村調査法)入門」

 去る平成11年2月24日および平成11年4月23日にそれぞれRRA(Rapid Rura1 Appraisal)入門」およびPRA(Participatory Rural Appraisal)入門」をテーマに調査手法の基本的理解およびコンサルティングヘの適用を考えるための勉強会が開催されました。講師には岡部寛氏および中村雄祐氏をそれぞれお招きしました。RRAおよびPRAの両勉強会において、その手法の生み出された背景・発展、特徴、RRA・PRAを実施する時の手順が紹介され、そして同手法の利点と欠点を含めた限界と適用可能性等についての説明がなされました。以下に要約を示します。

RRA(簡易農村調査法)入門

1.RRAの背景
 1970年代に、従来までの開発および開発関連の調査手法に対する批判や反省点が挙げられ、この時に、従来の手法には大きく分けて以下3つの問題点があるとされた。
●環境や政治、組織や文化といったいわゆる「人間的」要素を考慮にいれなければならない。
●開発においては、何よりまして現場の人間の考え方を考慮に取り込む必要がある。
●開発の現場で求められる即時性や簡易性に欠けている。
 この結果、開発を見つめ直すための新しい調査手法が模索され始めた。
 RRA(Rapid Rural Appraisa1/簡易農村調査法)は、1980年代に英国エセックス大学(Essex University)のロバート・チャンバース(Robert Chambers)教授らが中心となって開発したといわれている開発調査手法で、現在、国際機関の調査やNGOによって広く利用されている。タイではコンケン大学(Khon Kaen University)が1983年に農村開発プロジェクト調査にRRAを導入して以来、今日まで様々な調査研究活動に採用しており、また、外部に対する研修を適宜行っている。1985年にはRRAの国際会議を開催した。

2.RRAの特徴
 農村とそこに住む人々のことは、状況をもっとも知っている住民自身から学ぶ、という姿勢を強く持った開発調査手法の一つがRRAである。RRAは、質問票の配付・回収、そして分析という従来のやり方で得た調査結果が、農村の現状と余りにもかけ離れたものであることの反省から考案されたものである。基本的に、調査者や調査手法の持つバイアス(Bias)をできるだけ減じ、正確な情報を導きだすために、調査チームの構成・調査対象者の選定・調査手法の多様化という3本柱(トライアンギュレーション/Triangulation)を中心に組み立てられている。

3.RRAのコンセプト
●調査は短期間に集中して行われる。調査=学ぶこと、であるから新しい発見と理解を繰り返し積み重ねていくことが基本である。学ぶ、つまり受益者や他の専門家の意見に耳を傾ける姿勢と余裕が必要である。
●RRAはデータの統計分析を行うものではなく、情報を集め、内容を深く吟味するための調査手法である。
●RRAの目的の一つは、効率的な時間の利用とコストの低減にある。その上で、効果的な調査を進めるためにいくつかのアプローチを取り入れる。
●上述したトライアンギュレーション(3本柱)の1つとして、少人数の異なる専門性を持ったチーム構成で調査が行われる。得られた情報に対しての解釈と情報の共有化、チーム内での原因分析や状況の評価が非常に重要である。通常、半日の調査で、半日の討議が行われる。
●2つ目の柱となる、調査対象者を地域内に存在する色々な社会階層(富裕層と貧困層)、男性と女性、農業従事者と非従事者などを考慮し、調査目的によって意図的に選ぶ。
●3つ目の柱として、キーインフォーマント(Key Informant/主要情報提供者)やグループインタビュー、個別インタビューなどの聴き取りのほか、いくつかの調査手法を組み合わせる。これにより、結果のクロスチェックが可能となる。
●調査結果を視覚化する。調査対象者が調査に参加し、かつ間違いを修正しやすい状態にすることで、結果のプレゼンテーションも容易になる。フィードバックすることにより、調査の精度を向上させる。

4.RRAで利用される基本ツール
●基本的なツールは、インタビュー(Interview)の他、マッピング(Mapping)、カレンダー(Calendar)、トランゼクト(Transact)、ダイヤグラム(Diagram)、ロジックツリー(Logic Tree)、デシジョンツリー(Decision Tree)など様々である。全てを用いるわけではなく、調査目的に応じてツールを選ぶ。
●インタビューは、質問票ではなく主要トピックを網羅したガイドライン(チェックリストともサブトピックともいわれる)を用いて行う。ガイドラインはインタビューの流れが調査目的から外れすぎないように、そして基本項目の調査漏れがないようにするための指針となる。インタビューはSSI(Semi-Structured Interview)と呼ばれる。

5.一般的なRRAの手順
●目的によって、数日から数ヶ月要するものもあるが、通常1ヶ所3日間から1週間程度で行われる。
●実際の調査の前にできるだけ情報を集め(現地踏査、2次データ収集など)、インタビューガイドラインの内容やツールの選択に反映させる。
●インタビューはキーインフォーマント、特定のグループ(農民組織、女性組織など)、世帯の3種類を対象とする。調査に役立ちそうだと考えれば、アクシデンタル・インタビュー(Accidental Interview)を行う。
●インタビューと同時あるいは別の時間に、ツールを用いて情報を補完・チェックする。
●最終日には、各種インタビューにより集められた情報の確認のため、調査対象者を集めてチームの理解を説明し、ラップアップを行う。

6.RRAの限界と適用可能性
●RRAは情報収集のための一つの手法に過ぎず、そこには、限界があることを認識することも必要である。考えられる問題点を以下に挙げる。
 i)サンプリングが恣意的に行われる。
 ii)バイアスは完全に消せるわけではない。
 iii)定性的データの記録やコード化ができない。
 iv)データの分析方法(統計処理など)が確立されていない。
●従って例えば、政策やプログラム決定のための、信頼性の高いデータを必要としている場合や、ある国家プログラムの国内全域にわたる効果測定など、かなり高い精度を要求される調査には適さない。
●RRA実施のタイミングは開発調査を行う場合、本格調査の前段階で行い、住民の状況を把握した上でアンケート調査を行うのが最良だが、現実的には不可能である。
●RRAを実施するために必要なM/M(人・月)は、常識的に2M/Mは最低必要だと考えられるが、現在の調査では時間にゆとりがないことが多い。
●1チームは、3〜5人が適正とされており、基幹分野の専門家が最低1名入っている必要がある。更には、チーム内にRRAについて理解している人が1人は必要である。
●RRAを実施するには、通訳が必要となるが、通訳は常に中立であり、農民に対して圧力を与える立場、態度をとらせない人選、工夫が必要である。
●社会経済状況、伝統文化、価値観、宗教、既存組織などの情報を集めるだけでなく、プロジェクトの問題点や成功の要因を明らかにする調査や、ある事柄について深く掘り下げた情報が必要な場合には、威力を発揮する。
●RRAはその他の調査手法、例えば質問票を利用した統計手法などの特徴や利点を良く理解し、状況に応じて補完的に用いることが望ましいと考えられる。この場合、調査にかける資金・時間・技術力なども考慮して調査手法を選択する。

7.最後に
 RRAは、情報収集のための手法としては利点が多く、開発調査において積極的に活用すべき手法であると思われる。しかし、実際に現場でRRAを活用し、「住民参加型」の調査とするまでには、住民の持つ意識のレベルやRRA実施のタイミング等に多くの問題も残されている。今後RRA手法と他の手法が組み合わされ、より効果的な開発調査手法として発展させていく必要があると考える。



PRA(参加型農村調査法)入門

1.PRAの背景
 1980年代半ばにPRA(Participatory Rura1 Appraisal/参加型農村調査法)はRRAから派生した。PRAはRRAと同様、農村地域のデータを収集し分析するのに用いられる手法である。
 RRAが発達したのは、地域開発において専門家等外部の人間が地元住人との意志疎通がうまくいっていないことが問題となったからである。一方、そこから派生したPRAはデータ収集・分析は地元住人が行い、外部の人間は地元住人をコントロールするというより手助けするという様相を呈する。
 PRAは1980年代半ばに登場後、開発援助の本来の受益者である住民、特に非識字率の高い女性や貧困層住民が自分たちの状況を自ら把握し、問題点を分析し、解決法を探すための手法としてNGOを中心に発展してきた。その活用範囲は農業、灌漑、水利、環境、健康、都市開発など様々な領域に及んだ。1990年代に世界的趨勢として「開発における住民の位置づけ」が“受益者"から“当事者"に変化するに伴い、住民参加、つまりPRA手法がアジア・アフリカ・ラテンアメリカ各地で爆発的に普及した。

2.PRAの特徴
 RRAは外部の専門家が現地の人々から情報を抽出する手法であるのに対し、PRAではより参加型に徹しており、現地の人々自らが開発計画・その具体的内容・効果等を考え、実施するのを後ろで見守る、インストラクター的な役回りを持つ。PRAは住民参加を促すため、誰でもが参加できるよう使用するメディアには下記のような特徴がある。
  ●材料:手近な小物+地面
  ●サイズ:庭、広場、集会場
 また、これらを利用する利点として、
  i)識字技能に過度に依存することなく、状況把握・コミュニケーションを図ることができる。
  ii)言語化されにくい体験的知識の視覚化・構造化・外在化・共有を促すことができる。
  iii)地面など大きなサイズで行い、より多くの人間の参加を促すことができる。
  iv)複合的な状況に対する評価・利害の多様性を顕在化することができる。
 つまり、文字を使用するよりシンボルや絵を使用し、また、小さなノートや黒板などを使用するよりも集会場などの地面に直接書くことにより、多数の住民の参加を促し、問題意識を持たせるよう配慮されている。

3.PRAの手法例
 今までPRAの背景と特徴を簡単にまとめて述べてきたが、実際どのようにしてPRA手法を使用するのかを以下の例を持って示す。
(1)範疇化と関係付けの視覚化
 例えば住民の日々の仕事を聞き出し、その範疇化を行うときに、「水汲み」を“水汲み"と文字で表さずに、例えば“バケツ"そのもので表す。また、ある範疇の人数などの数量を示す際に、「女性5人」を“女性5人"と文字で表さず、円グラフや“♀♀♀♀♀"で表す。
 このことにより、識字率に係わらずインタビュー対象者にも何が行われているか一目でわかり、住民の参加意識の低下を防ぐ。
 シンボル使用の例として、上記2例の問題点抽出の段階以外にも、解決方法模索段階でも使用できることを以下の例で示す。

 上記マトリックスは例えば住民が識字率向上・情報網普及・収量増加を望んでおり、それに対し政府・NGO・住民自身のどれが責任を持って対処すべきかを投票した結果であると考えていただきたい。この表を地面に描き、石ころなど身近なもので投票していく。
 こうして多数の住民が識字率の高低に係わらずに問題意識を持ち、事業に参加できるようになる。
(2)多様な状況理解の顕在化
 例えば住民に村の地図を書いてもらう(縮尺等は関係なし。地面の上に枝や石などで)。すると、ある男性は大きな街までの道路の様子を詳しく書き、ある女性は道路脇の井戸や畑の様子を詳しく書いたりする。このことにより、住民それぞれが何に対して意識が高いのか、自ら理解することができる。
 また、住民の1日の、また1年の生活パターンを図(生活カレンダー等)にしてもらう。すると、住民の生活が何に重点を置いているかが一目でわかるようになる。
 この様にいつ。どこででも・誰でも、住民の低抗感を持たせずに行うことが重要である。また、女性・男性、権力者・貧困層などとグループ分けし、「村の権力者に遠慮して自分の意見は言えない」などの障害を取り払い、あらゆる住民層からの意見を抽出することも重要である。

4.PRAの限界と適用可能性
 以上、PRAはRRA同様、農村の状況は農民から学ぶという姿勢を基に、さらに住民の参加意識を高めた手法である。しかしながら、実際には、
 ●大都市など住民数が多いところでの実施は不可能である。
 ●住民が参加意識を持っようにするため、それまでに住民の信頼を得なけれぱならない。
 ●抽出データ解析方法が確立されていない。
等々の問題点がある。

5.最後に
 実際の開発調査においては、PRAに住民を参加させるまで信頼を得るにはあまりにも期間が短く、実際に効果的に実施することは困難であると思われる。
 我々コンサルタントのPRA使用法としては、現地NGO等が行ったPRAの結果を見せてもらい、それを解析するのも現実的かつ効率的な手段であろう。
 このように、PRAは我々コンサルタントとしては数々の問題点も含むが、住民の問題意識を抽出するための重要なツールであることは間違いない。開発援助に係わるものとして、十分に活用すべき手法である。



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