No.63 2001. 10
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●●青年会議だより●●●
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ADCA活動記録

<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成13年7〜9月>

オマーン 水資源開発・管理計画
パキスタン バルチスタン州旱魃対策計画
タイ 農業情報システム整備計画
カンボディア 小規模灌漑開発セクター・プログラム作成支援
カンボディア 自立型農業普及体制整備計画
モンゴル 東部地域農牧業開発計画



<講演会/研修>

平成13年度技術者研修(報告)
−PCM手法(計画・立案)研修−

 本年度第1回のPCM手法(計画・立案)研修が7月16日から18日の3目間、新橋アネックスで開催されました。参加者は20名で既にPCMワークショップを経験した人も含まれていました。PCM手法の概要、参加者分析、問題分析、目的分析、PDMの作成等について説明及びグループ作業が熱心に行われました。ADCAのPCM研修の特色としては農業プロジェクトに焦点を当てたテキストを使用し、モデレーターおよび参加者は農業プロジェクトの経験を積んでいる人が殆どであるため、研修即実践的PCMとなる傾向が見られます。したがって、参加者は今後の参考点を知るとともに、過去に関わったプロジェクトについて自己レビュー出来るというメリットがあります。今後ともPCM研修は続けていく予定ですので、会員の方々は経験の有無にかかわらずふるって参加されるようお願いします。


第11回ストックホルム水シンポジウムと
第52回ICID執行理事会および第1回アジア地域会議(報告)

 世界の水問題を論議する場として有名なストックホルムシンポジウムの第11回会議が8月13日から16日までストックホルムで開かれました。今回の全体テーマは「対話による掛け橋を」というもので分野間の調整問題、環境と開発の問題、環境と食料安全保障の問題等のワークショップが開催されました。また、このシンポジウムの機会を利用して第3回世界水フォーラム事務局は2000通を超える応募の中から選ぱれた同事務局と世界水会議が今後共同で使用する新ロゴを発表しました。
 また、9月16日から21日まで韓国のソウルで第52回ICID執行理事会とこれまでアジア・アフリカ地域会議として行われてきた会議がそれぞれに分離し、記念すべきその第1回アジア地域会議が開かれました。ICIDの各ワーキンググループでは灌漑や排水あるいは環境等に関する新規および継続課題の議論を展開するとともに、今回初めて3つのタスクフォースが第3回世界水フォーラムに備えて農業、農村開発および農業用水等に関するICIDの立場を明確にすべく議論を開始しました。
 以上のようにADCAが関わる農業開発や水資源開発においてその対象となる水問題が世界における重要課題となりつつあり、世界各地でいろいろな角度から議論が展開されています。会員各位もこのような状況を把握しておく必要が益々高まってきていると思われます。


青年会議だより
海外農業開発コンサルタントの現状と将来に関する考察(その2)

ADCA青年会議 幹事長 西谷 光生

日本技研株式会社 海外事業本部

1.はじめに

開発、国際協力について考える機会が増えた時代である。ODA改革と称して数多くの行政機関、研究機関、経済団体、NGOなどが議論し、これからの開発援助について考えている。これまでの開発協力に対する反省のほか、国際的な援助の潮流の変化に追従していることと、国内の経済低迷による圧力があることがその要因と思われる。
もちろんコンサルタントも直接業務に携わりながらいろいろと考えている。ADCA青年会議は、不定期ではあるがこの紙面を借り、海外農業開発コンサルタントの現状・将来に対する意見を、われわれの立場から発していきたいと思う。本稿は、ADCAニュース58号に引き続くものと位置付ける。
ところで、途上国の発展は子供の成長に似ていると最近つくづく感じている。われわれ若手から中堅のコンサルタントの多くはその両方に関わっていることが多い。まずは、開発協力(ここでは農村開発援助)と子育ての類似性に着目し、論を進めることとする。

2.開発協カ(農村開発)と子育て

2.1農村開発と育児は共通点が多い

農村開発は発展の初期段階にある農村の発展の手助けをするという点で、育児と共通した概念が通用するように思う。子供の成長の各段階において、親や友達の関わり方が異なるように、農村の発展段階に応じた関与が必要であろう。

2.2参加型開発でニーズをつかむ

幼児が何が好きなのか、得意なのか、どうすればわかるのだろうか。言葉はほとんど通じない状況で。とにかくしばらく子供と一緒に遊びながらまずは観察することから始まるであろう。注意深く見ていると、そのうち何かのきっかけでその長所と短所がきっと見つかる。たとえば、絵が好きそうだと思ったならば、次にクレヨンを与える。子供が本当に絵が好きなら、それで一生懸命遊ぶでしょう。こうして長所を探して伸ばすことのほうが短所を克服するより効果的な場合が多いし、なによりお互いに楽しい。
一方、農村開発計画を策定するにあたり、まず農村調査を行うことが多くなってきた。この段階では、参加型計画手法としてPRAなどが行われることが多い。ファシリテーターと呼ばれる保母さんや先生にも似た外部者が村に入り込み、その特性や杜会構造などを住民とともに調べ、間題点を話し合うことを経て、開発課題を見つけて、プロジェクトを具体化していくのである。調査手法やツールは多くあるが、いずれもこうした考え方や方法が基本となっている。
住民との対話の中で、ニーズを的確につかまえる手法は、子育てと同じである。実際に筆者がPRAに参加した経験から感想を述べると、ファシリテーター側も楽しいものである。ワークショップに集まる住民を観察し、その挙動を観察するだけでも、結構いろいろなことが分かる(ような気がする)。住民への説明や意見交換などに想像以上の時間がかかるが、その過程も参加型開発には必要なものである。
ここで言葉の問題がある。農村調査は現地の言葉で行われ、国際語はもちろん、その国の国語も使われないことも多い。したがって、われわれが調査する場合は、現地でファシリテーターを雇用するケースがほとんどであろう。われわれ調査団はやむなく一歩引いてアドバイザー的な参加をする。もっとも、コンサルタントが前面に出すぎると住民側が身構えたり過度の期待を抱いたりするので、この方がよいのかもしれない。
日本の農村開発においても、基本的に参加型の開発が多く行われてきた歴史がある。もう20年も前の農業改良普及員のマニュアルを読んだことがあるが、その内容にはかなり参加型開発の要素が含まれていたことに興味を抱いた。直接農民に対する者は、以前から意識せずに参加型開発を行っていたようである。ところが、コンサルタントが関わってきた開発協力事業では、効率性の重視やコミュニケーションの間題などから、受益者との直接対話はあまり行われなかった。あるいは、そのような計画の根幹に関わる部分を相手国政府に任せてきた。
コンサノレタントの多くは、昨今の参加型へのシフトに巻き込まれ、受益者とのコミュニケーションに興味を抱き始めている。本来あった参加型開発への意識が高まってきているのである。

2.3一歩だけ進んだ技術

1年生には1年生の教科書が必要である。入学と同時に漢字の混じった教科書ではいけない。みんなひらがなから覚えていくのである。
近年インターネットをはじめとする情報通信技術の急速な発展と普及により、途上国といえども最新技術に対する知識と要求が大きい。わずかな改良では、知識層は満足せず、感謝されない。
一方、援助する側も最新技術を用いたいと考える。コンサルタントはその技術力を示したいために、とかく行き過ぎた計画・設計をしてしまう。援助側の自己満足的なプロジェクトに対する批判は厳しい。利用する側への配慮を欠くことが問題なのであろう。
途上国へ導入する技術は現在の一歩先のものがよい。管理技術やオペレーションコストの負担能力を判断し、適切なものを選定するほうが親切である。維持管理費の低減を目的とし多大な初期投資を行うこともありうるが、その維持管理にも相応の技術が要求されることを十分に考慮しなければならない。

2.4成長の段階に応じた対応

2年生には2年生に対する接し方がある。1年生と同じ対応では、現状に甘えるばかりか、成長する過程を阻害しかねない。あるいは、親や教師は子供からばかにされる。
レベルが向上したコミュニティーには、それに応じた対応が必要である。コンサルタントなど開発支援者は、開発初期段階のコミュニティーに対して親や教師であろう。開発中期段階においては兄弟や友人であろう。開発後期になると、杜会そのものになっていく。こうした関与の仕方が大事なのではないか。開発を急ぐあまり、あるいは目先の成功を確保したいがために、いつまでも過保護の状態を続けていてはいけない。

2.5小集団から大集団へ

幼児が幼稚園、小学校へと進むにつれて、家庭内の世界から少しづつ世界が広がっていく。他人との交流(コミュニケーション)が広がり、刺激を受けることにより、体力、知力が大きく伸びるものである。
同様に、自然に小さなコミュニティーで生活してきた村人は広い地域とのコミュニケーションを行うことによって大きな刺激を受ける。村人がこうした刺激を受ける機会を与えることは非常に効果的である。
あるJICAプロジェクト方式技術協力のリーダーの言った「何もしないのも大事だ」という言葉が印象に残っている。そのプロジェクトは非常に参加型で進められており、二つの地域の農民の交流を重視している。プロ技チームは住民の自主性を尊重し、発展のきっかけ作りと技術アドバイザー的な関与をしている。農民に対しては何もしない態度で接する一方で、綴密な技術検討も行っている。また、チームと農民の間に先方プロジェクト実施組織の積極的な関与をコーディネートしている。農民の相互交流による開発意識の醸成を図り、また自然発生的な競争意識に期待し、そして地道な成果が得られ始めている。
また、別のブロ技のリーダーの「あまりにも参加型」という言葉も興味深い。開発協力側も納税者や支持者に説明責任をもつことから、ある程度のコントローノレは必要であろう。参加型という言葉を無批判に取り入れて住民の意向を100%進めることは、必ずしも正解ではないと思う。開発の主体性を住民に渡すが、その管理責任が問われる。コンサルタントは、住民主体の影で、いい意味でのコントローノレをしていかなければならない。教室には先生がいる。児童・生徒の話をよく聞き、観察し、自主性を尊重しながらも放任ではなく、よい方向へ導くことができる先生が望まれる。少なくても学級崩壊は免れたい。

3.開発アプローチ

3.1参加型開発は常に正しいか

通常の開発事業において、設計管理にかかる費用は全体事業費の10%前後ではないだろうか。参加型開発が開発論として是であることはわかっていても、もし調査計画にかかる費用が全体事業費の多くを占めるようならば実際論として是であろうか。
また、参加型開発を進めるには、多くの時間が必要である。子育てと同様長い目で見ることが肝要であるが、タイミングを逃して開発が進まないのでは困りものである。事業の実施には住民の合意形成が必要不可欠であるが、事業を進める過程で合意を形成していくこともありうるのではないか。

3.2従来型トップダウン的開発は時代遅れか

参加型開発が主流になる以前は、行政組織が計画し実施するプロジェクトやプログラムが主流であった。前者が自立発展性を重視するのに対し、後者は経済効率性を重視したものであると考えられる。途上国の限られた資源を有効に活用するには、従来型の開発の意義も大きいと考える。開発地区すべてでていねいに参加型開発を実施するのは非効率である。たとえば、杜会配慮を代表地区で十分に行った上で適切な開発計画を策定し、それを段階的に広範囲に広げていく方式はどうか。類似地区の開発計画をある程度トップダウン的に適用していくのも必要なのではないか。このような参加型開発と従来型開発との効果的な組み合わせがいずれ求められるてくるものと考える。

3.3世界同時的な構造調整について

国の発展段階に応じて政府の保護政策や国営企業の必要な時期があるのではないかと思っている。先進国の発展の歴史をみても、政府が国内産業を保護し国営企業が経済成長を推し進めてきた。発展のある時期には強い政府が必要なのではないだろうか。そうした歴史を持つ国々がこれから経済成長を始めようという途上国に対し、政府の効率化という名目のもとに小さな政府と産業の民営化を強要するのはいかがなものか。確かに行政機能の非効率性はコンサルタント業務を実施する上でも障害となっている。しかしながら、経済成長の段階を無視あるいは軽視して、世界同時的に構造調整を推し進めるこどには大きな疑問がある。

3.4環境と開発について

環境配慮は、今では開発協力においても常識と考えられている。自然環境はもとより杜会環境への配慮が必要不可欠となりつつある。一方、環境を犠牲にして発展してきた先進国の歴史がある。仮に環境を保護していたら経済開発はどのようになったのであろうか。産業革命時代のイギリスで、公害問題をとりあげて工場の運転が制限されたら、あのイギリスの地位が確立されたであろうか。よりよい杜会が生まれたのであろうか。極端な言い方をすれば、環境配慮を途上国に押し付けるのは、先進国のエゴではないか。ある段階では、環境よりも経済開発を優先的に行うことも是ではないのか。クズネッツの逆U字仮説は経済成長の過程で所得分配が不平等になることを示すが、それは避けられるものなのか、必要悪なのかは結論は出ていない。同様に、これまで述べた開発アプローチ、政府の役割、環境などについても、国や地域の成長段過程において、一時的にマイナスの方向ヘシフトするのはある程度避けられないことなのかも知れないと思う。これまでどの国や地域においても、すべての住民が満足し杜会や自然環境が守られた理想的な開発が行われた例はないのである。

3.5地道な開発の対極にある国際紛争

2001年9月にアメリカで発生した同時多発テロ事件は、アメリカの報復という形で解決の方向に向かっているようである。これについての意見は差し控えるが、このような国際紛争は地道な開発行為を行っているものとして非常に残念であり、不快である。筆者はその時ごく小規模の農村開発に従事していたのであるが、無力感を覚えた。少しづつ住民の生活を改善する努力をしていても、一方ではこうした争いにより大きな不幸が生じているのである。わが子にはよい杜会を残したいと思うように、すべての国や地域が平和に成長して行くことを望むのである。残念ながら、世界から紛争がなくなったことは未だにないのであるが。アフガニスタンのタリバンが制圧されつつある今日時点で、その復興対策が議論されている。コンサルタントは、自然災害や紛争からの復興に対して技術的に支援することができる。天災からの復旧に対してはコンサルタントの意気込みも大きいが、戦争からの復興に関わることは望むところではない。これは決しては地道な開発行為とはいえない。和平合意後のサラエボを訪れたことのある筆者は、つくづくそう感じるのである。

4.ODA改革について

冒頭ふれたように、ODA改革が多方面から議論されている。外務省主催の「ODA改革懇談会」などであり、国際協力の理念の再構築やODA全体の構造改革が議論されている。こうした中で、外務省経済協力局開発協力課の平成12年度の調査研究報告書である「開発調査(新フレームワークの形成)に関する報告」は具体的な提案がなされているものとして、コンサルタントの立場からも注目される。この調査研究は、世界的な援助の潮流の変化に対応し、ODA全体の質と効率性を高め、中長期的な展望に立った、新たなフレームワークに関する総合的な提言を取りまとめることを目的としている。まず、これまで指摘されている開発調査の問題点を包括的に整理し、改善策を検討している。そして、開発調査を発展的に解消し、新しい機能とシステムを与え直した新フレームワーク「総合型開発事業(仮称)」ヘシフトすることが提案された。さらに、この総合型開発事業を実現するために、6分野17項目の提案がなされた。その具体的な内容については、国際開発ジャーナル9月号、12月号などを参照されたい。
総合型開発事業の構造を簡単に示すと、?案件採択、?開発基本調査(Strategic Initiative, S/I)、?開発事業調査(Project Study, P/S)、?案件内実施(Project Implementation, P/I)、?知のプラットホーム、?案件評価からなる。この提案によると、案件採択の段階では、途上国からの要請に加え、広範な人々からの提案も加えて政府協議が行われることとなる。開発現場の実情を知るコンサルタントからの提案も直接反映されることに期待をもっている。また、次の開発基本調査には、国別援助戦略、セクター別援助戦略、事前評価などが含まれる。こうした調査にはコンサルタントの知的支援能力を一層向上させて対応しなければならない。調査の本格フェーズはコンサルタントの活躍の場として最も重要な段階であるが、新提案では現行の開発調査を引き継いだ開発事業調査と調査の中で提案されたプロジェクトの実施を目的とする案件内実施からなる。調査の段階で事業を実施するものには、これまであった実証調査、B/D調査、D/D調査に加え、小規模プロジェクト、緊急プロジェクト、政策実行支援、プログラム援助調整、事業化準備活動が含まれる。調査がここでいう案件外実施に移るのに確実性がなかったこと、時間がかかっていたことから、案件内実施の充実は望ましいと考えられる。調査報告書を作成してプロジェクトが終わりになるケースが減ることが期待される。また、調査と併行して一部の事業が実施されるために、調査計画の実効性が高められることであろう。一層の責任ある態度で調査に臨まなければならない。
今後どのようにODAが改革されていくのかは明らかではないが、コンサルタントとしては変化にいたずらに翻弄されることなく、自己能力を高めしっかりした対応を心がけていくように考えている。

5.おわりに

まとまりのない論となってしまったが、現場で開発協力にあたるコンサルタントとして、最近の援助動向に対する理解と意見を述べたつもりである。誤解を恐れず極端な言い方も使ってみた。全体的に子供の成長と農村の成長に重ね合わせてみたのであるが、出張が多く子育てにもあまり参加していないのに勝手なことを書くなと言われそうで、家族には到底見せられないのである。


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