No.65 2002.4
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●●青年会議便り●●●
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ADCA活動記録
<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成14年1〜3月>
1
ラオス
南部ラオス洪水調整灌漑農業開発計画
2 フィリピン キリノ地下水灌漑開発計画
3 エジプト ギザ州処理下水利用砂漠農業開発計画
4 エジプト カイロ近郊農村集落排水処理施設整備計画
5 パキスタン イスラマバード・カブール回廊農業・農村総合開発プログラム
6 パキスタン クエッタ盆地農業・農村総合開発プログラム
7 アフガニスタン   農業セクター復興計画
8 インドネシア 東カリマンタン小規模灌漑農業開発計画
9 イラン アルムート導水によるガズビン灌漑農業計画
10 ウガンダ 家畜検疫センター整備計画
11 ヴェトナム ダクラク省農村地域開発計画
12 モロッコ ハシェフ地区農業農村整備計画
13 トルコ 全国小規模灌漑農村開発事業計画
14 セネガル サルム川上流域農業総合整備事業
15 ホンデュラス オランチョ県カタタマス盆地灌漑農業開発計画 
16 キューバ 東部地域環境保全型農業開発計画
17 コロンビア カルダス県農業・農村総合開発計画
18 コロンビア キンディオ県天然資源保全センター
19 エルサルヴァドル レンパ川下流域農業・農村環境総合開発計画
20 アンゴラ ベンゴ川流域農業総合開発計画
21 モザンビーク ガザ州農業試験研究・普及連携強化モデル計画
22 モザンビーク 中・北部地域灌漑セクターマスタープラン計画
23 インドネシア NTT州西チモール地区貧困対策小規模灌漑施設整備計画
24 ボリヴィア ヤパカニ川右岸地域農業復旧計画
25 チュニジア 北部中山間地域農業農村総合開発計画
26 ヴェトナム ラガ川下流平野農業開発計画
ヴェトナム ソンライ川流域農業・農村開発計画
ケニア 輸出園芸作物流通施設整備計画
タ イ 天然資源の効果的運用と持続的農業開発の為のナム/ ヨム河流域の湖沼開発計画


<講演会/研修>

第18回海外事情講演会(報告)

−世界の食糧問題−

第18回を迎えた恒例の農業土木学会、(財)日本農業土木総合研究所との共催の海外事情講演会が1月28日農業土木会館で約100名の参加者を得て開催された。

依然として開発途上国および世界の経済問題の中で大きなウエイトを占めている食糧問題に関して、次の3つの観点から捉えた状況について講演がなされた。

「世界の食糧需給」について小山修氏(国際農林水産研究センター)、「世界の食料事情−商社から見たー」について江藤隆司氏(穀物アナリスト、元伊藤忠商事)、「ODAによる食糧確保戦略−ブラジルセラード農業開発を事例として−」について狩俣茂雄氏(緑資源公団海外事業部長)がそれぞれ実例や経験に基づき明快な説明が行われた。

平成13年度第3回技術者研修(報告)

――PCM研修(モニタリング・評価)――

本年度第3回のPCM研修のモニタリング・評価編が2月26日(火)から3月1日(金)までの4日間、農業土木会館会議室にて行われた。今回は年度末ということもあり、参加者は10名と予想を下回ったものの、研修を効果的且つ効率的に行うことが出来た。

当日のモデレーターは、前回のPCM研修(モニタリング・評価)を担当して頂いた花田重義氏(?国際マネジメントシステム研究所)と塩畑真理子氏(?コーエイ総合研究所)にお願いいたしました。

今回の研修ではプロジェクトの管理についてISOのプロジェクト管理手法を基礎に置くことの大切さを前回よりも更に強調しました。どのようなプロジェクトでも将来は評価の対象となる可能性を孕んでいることから、プロジェクトの評価とモニタリングを一体として捉え、モニタリングの重要性を認識することが重要であるとの視点に立って研修プログラムが編成されました。

常にプロジェクトを的確に把握し、計画的実施を確保するためのプロジェクトの分析、実施上の管理ポイントの理解、これに基づく事業のモニタリング、実施後の評価着目点、手法の確立によって事業が円滑に進められることを講義と演習で把握できるよう努めました。

又、実際の業務においては、PCMの履修順序に関係なくモニタリングや評価業務に携わることがあります。経験の浅い参加者でもPCM手法を継続して履修できるようPCM(計画)も演習に先立ち時間を割くこととし、PCM手法の概要、参加者分析、問題分析、目的分析、PDMの作成等基本となる事柄についても復習が行われました。

平成14年度に於いてもこの重要なPCM研修を計画編とモニタリング・評価編に分けて実施する予定ですので会員の方々は経験の有無にかかわらず奮って参加されるようお願いします。

平成13年度国別調査の実施(報告)

−インドネシア・フィリピン−

今年度の国別調査が1月29日〜2月7日にかけてインドネシアとフィリピンを対象に実施された。今回の調査は事務局のみならず運営委員会から3名が参加した。

インドネシアでは意見交換と聞き取りを通じてWATSAP(水行政の構造調整計画)実施に関わる諸法制の準備状況、あるいは行革と地方分権化の進行とその影響等について調査を行った。現状では依然として事業の実施主体の特定が難しいことや農業政策にも変化が生じていること、予想を越えた地方政府の対応に対処するため地方分権関係の法律の再改定も検討されていることが知らされた。

今回の調査ではジャカルタが長期降雨後に生じた未曾有の洪水のため市内の各所で氾濫し、道路が寸断されたり床上浸水等の被害の状況を偶然目の当たりにすることとなった。

フィリピンでは農地改革の進捗状況や近代化農業政策の進捗、インドネシアと同様に進められている地方分権化の状況、国家灌漑庁の業務等について意見交換と聞き取りを行った。今後の開発振興地域としてフィリピン、援助国、ADB等の国際機関はミンダナオ島を挙げていますが、政治的状況悪化のためやや足踏み状況にあることがはっきりした。

平成13年度国別研修(報告)

今年度の国別研修はインドネシアから居住地域インフラ整備省のHasan技術指導局長と農業省のHartono灌漑水管理部長を招き3月16日〜24日まで行われた。

18日、農水省とJICAへの表敬訪問後、開催されたworkshopにおいて約30人ほどの出席者に対してインドネシアにおける灌漑事業、地方分権、WATSAP(水行政の構造調整計画)の現況等についてHasan氏から又、農業省における灌漑事業の位置付けとインフラ整備省との機能と権限の調整および水管理の重要性について説明がなされた。質疑応答の後、懇談会に移り打ち解けた雰囲気の中で更に意見交換が進められた。

両氏は研修期間中の20日〜21日に滋賀県において開催された「第3回世界水フォーラムプレシンポジウム−モンスーンアジア水田灌漑の多面的な役割−」に出席し、アジア地域の水田農業の特色について学ぶ機会を得た。又、現地見学はプレシンポジウムのプログラムに組まれた棚田や環境整備の現地見学、更にADCAによる研修プログラムとして滋賀県の協力を得て、事業完了した旧国営日野川地区の土地改良区による土地改良区の運営と施設の維持管理、水管理等について土地改良区および農家から説明を受け日本における土地改良区の役割と水管理の実態について知見を広めた。


青年会議便り
地球環境問題と農村開発

太陽コンサルタンツ株式会杜

羽石祐介

y.haneishi@taiyo-c.co.jp


 2001年11月に(財)地球環境戦略研究機関(IGES)上級コンサルタントの平石尹彦(ひらいしたかひこ)氏をお迎えして「地球環境問題と気候変動問題」というタイトルでADCA青年会議勉強会が行われました。1999年度ODA白書では今後の日本の食料・農業協力の課題として4つの柱が掲げられました。そのひとつに「環境保全型農業開発への協力」があります。農業と密接な繋がりのある環境や気侯に関する問題は今後もより一層注目されるでしょう。わたしたち「持続可能な農業・農村開発」を志すものにとって、これらの問題は常に意識を傾けるべき対象ではないでしょうか。講義の内容をもとに、受講しての感想を述べながら関連情報の紹介をさせていただきます。

1.環境と貧困の問題

 貧困は、多くの環境悪化の原因となり、その結果、将来の開発可能性の低下につながっています。このことは貧困の継続の原因にもなっています。最近のグローバル経済の発展は、裕福な者と貧しい者の格差が広がる原因になっています。1997年の国連環境計画(UNEP)「世界環境概観報告書」では、「生産性と商品とサービスの配分の由々しき不均衡により世界の人間の生態系が侵されている」と、また、昨年の世界人口基金(UNFPA)「世界人口白書」は「世界人口のうちの裕福な20%が世界の自然資源の80%を消費している」と伝えています。この不均衡の是正に努めることが環境保全を進める上で一番遠いようで近い道なのかも知れません。

2.環境問題の現状

2-1.淡水資源間題

 世界水会議による「世界の水の展望」(Wor1d Water V1sion) 報告書(2001年2月)は、 ・世界の人口の5分の1は手頃な値段で安全な水を入手不可 ・世界の半分の人々は上下水道設備を利用できない ・毎年少なくとも300?400万人が飲料水媒介の病気で死んでおり、うち200万人は下痢で死ぬ子供達である ・食糧生産のための水が不足しているような国は増加しつつある、と報告しています。水問題は、食糧、衛生、健康、農業と密接な関係があります。また生態系の問題とも関連しています。したがって技術革新と政策刷新により水利用の効率を高める必要があり、より統合的な政策措置、とくに水資源の経済的側面に影響する政策措置が必要となっています。しかし水資源の保存と開発には巨額の投資が必要であることが水問題を非常に解決困難なものにしています。水問題は一部門の問題と考えられるべきでなく、水に関する将来的戦略の作成においては、多岐にわたる専門分野と利害の関係者が参加して、横断的に水問題を扱わなければなりません。第3回世界水フォーラム(2003年3月に日本で開催予定)は、このような部門間の横断的対話に貢献するものと期待されています。

2-2.地球温暖化

近年観測されている地域的な温暖化の影響

氷河の縮小/永久凍土の融解/河川、湖沼の氷結期間の短縮/中・高緯度地域の生長期間の延長/植物、動物生存域の極方向、高地への移動/植物、動物種の生育数の減少/開花時期の早期化、(新種)昆虫の出現、鳥の卵生の変化

 上記の自然への影響に加え、人為システムヘの影響も予想されています。人為システムで気侯変動に敏感なものとしては、淡水資源、農業、食糧、林業、沿岸、海洋システム(漁業)、人間居住、エネルギー、保険、金融、健康等が揚げられます。

 温暖化よる生活へのマイナスとプラスの影響

予測される悪影響

予測される好影響
・熱帯、亜熱帯地域における農業生産減少 ・温度上昇が2-3度である場合、中緯度の農業生産の増加
・温度上昇が2〜3度を超える場合、中緯度地域における農業生産減少 ・適切に管理されている森林からの生産増加                    
・水不足の地域(特に亜熱帯) における更なる水不足 ・例えば、東南アジアなどの水不足地域での不足軽減
・昆虫、水を経由する疾病の増加 ・中・高緯度地域における冬季の死亡減少
・広範な地域における洪水による人閻居住の破壊 ・暖房用エネルギー需要の減少
・冷房のためのエネルギー需要の増加

 異常気象による被害(干舷、洪水、ヒートウェーブ、雪崩、台風)は21世紀を通じ悪化し、極低温ピークの減少も予測されます。

2-3.生態系の保全に関する評価

 広い意味の環境または環境資源の概念が一般的になるにつれ、生態系への影響評価、生態系の価値評価がますます注目されています。しかし生態系とくにその評価について数量的議論を行うことは困難とされています。そのような状況のなか、世界資源研究所(World Resources Institute)の「2000-2001年世界資源報告書(Wor1d Resources Report)」は、生態系の潜在的価値の評価例を多く紹介しています。それによると、生態系アプローチを用いて環境影響評価を実施することを強く奨励しています。具体的には、ミレニアム生態系評価(MA)の実施を強力に推薦しています。

ミレニアム生態系評価(MA)
「MAは、世界の草地、森林、河川、湖沼、農地および海洋などの生態系に関して、水資源、土壌、食料、洪水制御など生態系機能が杜会・経済にもたらす恵み(財とサービス)の現状と将来の可能性を総合的に評価しようとするものである。人間が地球に与える影響の度合いのみならず、地球の生態系が壊されることなく存在し、回復する方法・手順を示すこととしている。その目的は、政策決定者に対し、世界の生態系の変化がもたらす人間生活や環境にかかわる影響について、総合的な科学的知見を提供することによって、生態系管理を改善させることである。」(環境省HPより)

3.関連する諸機関等

(A) 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)  http://www.ipcc.ch

IPCC 世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により1988年に設立された委員会で、気侯変動によるリスクに関する科学、技術、杜会経済各分野の情報を検討、提供している。調査研究機関ではない。IPCC総会の下に3つのワーキンググループと日本が共同議長を務める温室効果ガスの排出・吸収量の推計手法に関するタスクフォースが形成されています。ワーキンググループはそれぞれ地球温暖化の現状と予測、影響、防止の各テーマについての議論を進めている。各グループによる最新の報告書は上記HPから入手可。

(B) 気侯変動国連枠組条約第7回締約国会議(COP7)  http://unfccc.int/cop7

COP7

1997年12月に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、京都会議)において、先進国及び市場経済移行国の温室効果ガス排出の削減目標(目本は1990年時排出量を基準として6%カット)を定めた京都議定書が採択されています。この会議(COP3)により日本でもより一層環境への意識の高まりを見せていますが、議定書の目標達成にむけた更なる努力が必要となっています。2001年9月からモロッコ国マラケシュで始まった第7回会議では、京都議定書発効に異議を唱える国々を説得する為のルール作りが主題となりました。ここでの成果により京都議定書の2002年発効の可能性が近づいてきているようです。

(C) 第3回世界水フォーラム  http://www.worldwaterforum.org

(D) (財)地球環境戦略研究機関(IGES)  http://www.iges.or.jp

4.農業開発コンサノレタントとして

 環境の問題も貧困問題も地球規模での対策が必要となっています。近年、途上国における開発プロジェクトは貧困削減に重点を置いています。貧困が削減されることで将来的にその国、地域の人々の環境に対する取り組みが喚起される可能性があるかもしれません。逆に、そういった国、地域において環境改善に努める動きを支援することは、将来の発展可能性を高め、貧困削減につながるともいえます。環境悪化と貧困が密接な繋がりを持っているからです。
 環境保全を直接の目標とするプロジェクトもすでにいくつも始められています。農業分野では森林保全、砂漠化防止、土壌浸食防止などのプロジェクトがそれにあたります。国際的な影響をもつ環境問題を防止または緩和するODAプロジェクトは、その適正性、正当性という点からも優良な案件といえるのではないでしょうか。外務省HPには「ODAによる温暖化対策協力分野メニュー・リスト」として、我が国が今後行いうるODAを中心とした温暖化対策関連分野の全般的な協力内容(例示)が揚げられています。その中でも特に我々農業開発に関わるコンサルタントに関係するものに以下があります。

・森林の保全・造成、持続可能な農業

広域にわたる住民参加型植林
熱帯林等の保全・造成
持続可能な農業
半乾燥地におけるアグロ・フォレストリー
裸地、草地の植生回復による土壌保全
生物多様性の保全を含む保護地域の拡大と管理向上
農業等も含めた森林保全・造成のための地域マスタープランの作成
植林を進めるNGOへの支援


 上記分野ではすでに様々な調査、事業がなされており、引き続き行われていくと思われます。京都議定書において提案されたCDM(Clean Development Mechanism)が実際に動き出し、そのメカニズムに沿った形でODAによる直接的また問接的な援助ができるような政策措置がなされれば、ますますこの分野での援助活動が活発化することが予想されます。

CDM(クリーン開発メカニズム)

「CDMは、先進国と経済移行国が主に開発途上国において実施するGHG(温室効果ガス)排出削減事業から生じたと認証された排出削減量(Certified Emission Reductions, CERs)を獲得することを認める制度であり、先進国等にとっては獲得したCERsを自国の目標達成に利用できるというメリットがあります。また、途上国にとっても投資と技術移転の機会が得られるというメリットがあると考えられます。」(地球環境研究センターHPより)

 以上のような動きの中で、われわれコンサルタントは環境保全案件の発掘にこれまで以上に注目していく必要があるのではないでしょうか。


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