No.67 2002.12
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●●青年会議だより●●●
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ADCA活動記録
<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成14年7〜10月>
1
シリア
アルガーブ及び地中海沿岸地域農業・農村開発調査
2 カーボベルデ ション・ボン灌漑地区農業開発計画
3 ベナン ウエメ川中流域自給確立貧困削減農業開発計画
4 象牙海岸 サバンナ地方持続的農業技術普及計画
5 エクアドル 山岳地域農村復旧計画
6 タイ 天然資源管理と持続的農業開発のための能力強化戦略・実施計画調査
7 マラウイ 南部地区小規模ため池再活性化・農村開発フォローアップ
8 ウガンダ 中部3県農業・農村振興支援計画
9 エチオピア オロミア州農業セクター開発マスタープラン
10 エジプト バハルヨセフ灌漑用水路マンシャット・エル・ダハブ堰及びダイルート堰整備計画
11 フィリピン 農地改革地区アクセス改善事業
12 フィリピン ピナツボ火山被災国営かんがい地区復旧・開発計画
13 ドミニカ 農業支援体制強化計画
14 キューバ 全国灌漑マスタープラン調査
15 セネガル ポドール県小規模農民自立化支援農村生活環境改善計画
16 アフガニスタン カブール市及びカンダハール市周辺農業開発計画


<講演会/研修>

平成14年度第二回初級技術者研修(PCM手法・計画立案)



10月22日より4日間、農業土木会館6F会議室にて、本年度2回目となる初級技術者研修「PCM計画・立案コース」が開催された。モデレータは前回同様、?国際マネジメントシステム研究所の花田重義氏に、副モデレータは(財)日本国際協力センターの岸本昌子氏にお願いした。農業・農村開発関連の事例を用いた研修には正会員・賛助会員より合計9名が参加した。研修2日の23日午後には、?圭三プロダクションより、小林賢二氏をお招きして、主に話し方を主体としたプレゼンテーションに関する研修を実施した。参加者からは、途上国におけるセミナーあるいは調査結果報告の場のみならず、日常生活をおくるうえでも有益であるとの意見が出され、終了後に行ったアンケートでは、参加者の85%が、「研修が有益であった」と回答した。一部参加者からは、今回の講義の内容が一般的すぎるので、もっとコンサルタント業務に特化した指導がよかったといった意見も出された。

研修全体に関するアンケート結果では、「PCM手法による計画立案研修を良く理解することができたか」という質問に対して、参加者9名のうち8名(89%)が「非常に良く理解できた」あるいは「理解できた」と回答した。また、参加者全員が今回の研修が「期待通り」であったと回答し、研修が期待通りの成果を上げることができたことを示した。

研修の進め方に関しては、今回参加者が9人ということもあり、1チームにて研修を進めたが、2チームに分割し、2つの結果をもとにもっと理解を深めることもできるのではという意見もあった。

モデレータ・副モデレータの指導に関しては受講者全員が「非常にわかりやすかった」あるいは「わかりやすかった」と回答しておりモデレータ・副モデレータの指導が適切であったことが伺えた。今回の研修成果に関して、FASIDでもご経験のある両名の講師は、非常に分析が詳細でPCM研修のお手本となるものと評価されている。ただし、参加者の中には、経験が同じ人間が参加しているため、バラエティに富んだ意見が少なかったとする声もあった。

ADCAの研修全体に対する意見として、「JICA・JBICが正式に本研修を評価するように働きかけてほしい」との希望が3名から寄せられた。


青年会議だより
アフガニスタン調査報告

ADCA事務局

主任技師 山岡茂樹

shigeki-yamaoka@adca.or.jp


1. はじめに

ADCAは1989年以来国別農業農村情報収集調査を継続して実施し、今年で14年目になる。過去の調査国としてはフィリピン、インドネシア、タイ、パキスタン、ラオス、エジプト、グアテマラなどで、調査の成果は、ODAの分野で途上国の農業事情の一情報として活用されてきた。2002年度、ADCAは復興支援が本格的になりつつあるアフガニスタンを情報収集調査事業の対象国として取り上げた。アフガニスタンを対象とした背景には今年1月東京で行われたアフガニスタン復興支援会議がある。復興支援会議ではアフガニスタン復興の重点項目として行政能力の向上、教育、保健衛生、インフラ整備、経済システムの復旧の5項目に加えて農業および地方開発が取り上げられ、農業農村開発の重要性が認識された。また6月にカンダハールを訪れた緒方貞子政府代表も、復興には中央政府と同様に地方コミュニティーを強化すること重要であると農村活性化を支持された。治安上の理由から、農村部よりも首都カブール近郊への支援が先行していたが、国民の8割が農業にかかわるアフガニスタンの発展には農村部の活性化が重要であるとの意見は根強い。しかしながらアフガニスタンの農業の実際に関する情報は乏しい。このような背景の下ADCAはコンサルタント企業の協会という立場から、政府調査団に先立って、およそ20年に亘って国交が途絶えていたアフガニスタンの農業農村情報収集調査に乗り出すこととなった。

2. アフガニスタンの治安状況

アフガニスタンに関してまず注目されるのが治安状況である。アフガニスタンの治安は、新聞等で報道されている通り、不安定な状態が続いている。

アフガニスタン国の治安確保には全国規模での武装解除が緊急の課題とされている。その数は明確にされていないが1979年以降続いた混乱期には、ソ連、周辺国および西側の支援を受け、地方の農家にまで武器が流れ込んだと言われる。各国から援助資金が注入され、再三武装解除が試行されているが、国民の警戒心は依然強い。問題の解決には、地方軍閥の一斉武装解除とイスラム戦士(ムシャヒディン)などに対する新たな雇用機会の創出が必要とされている。

カブール市では、国連治安部隊(ISAF)が治安維持に大きく貢献している。カブールに駐留するISAFの指揮権は、2002年6月英国からトルコに移り、約1,400人のトルコ軍部隊が19カ国約4,500人の兵士を主導している。ADCA調査団が入国した7月は、ISAFのマークをつけたジープが市内を循環し、夜9時以降の外出禁止令は事実上10時以降に短縮され、治安状況は改善の方向にあった。しかしながら、その後も市内にて爆弾事件が数回発生しており、依然として不安定な状況は続いているとのことである。

また地方部では地雷が治安確保の大きな障害になっている。現在アフガニスタンには、4,000を超える地雷源に1,000万個を超える地雷が埋設されているといわれ、地雷による被害者は、過去20年間に80万人に達する。世界で最も地雷被害の深刻な地域のひとつである。UNDPは地元NGOと連携して、ここ10年間アフガニスタン全域で地雷除去作業をすすめている。地雷除去作業員の技術が向上し、作業は一定の成果が上がっているものの、現在でもひと月に90人近くが地雷あるいは不発弾の犠牲となっている

このような治安が不安定な状態は1979年12月のソ連軍の軍事侵攻以来深刻になったことは言うまでもない。8万人の兵力で侵攻したソ連軍に対し、各地で部族長が次々と抵抗を始め、ソ連が支持した共産党政権下では、各部族は弾圧された。ペシャワールなどへ逃げた一部のイスラム原理主義者は、ソ連軍に対しゲリラ戦を開始し、ムシャヒディンによる聖戦(ジハード)となった。アメリカをはじめとする西側諸国は、パキスタン、サウジアラビアとともにムシャヒディンを支援し、多くの武器、弾薬を提供した。支援を受けたムシャヒディンとソ連軍による戦闘がその後繰り広げられ、現在のように地雷が村、農地に埋められた。

加えて、耕作できなくなった農民と一般男子がムシャヒディンとなり残された女性、子供が難民となった。今年になって150万人以上の難民が帰還しているとのことであるが、難民数は現在も200万人を超え、世界で最も難民問題が深刻な国である。

3. 各国のアフガニスタン支援の現状

このような悲惨な状況のアフガニスタンに対し、東京で行われた復興支援会議では最大45億ドルの資金援助が表明された。表明された協力内容には総額45億ドルのうち、18億ドル以上を暫定行政機構制定後一年以内に供与するという目標も含まれた。

UNDPの取りまとめた情報によると、昨年の同時多発テロ以来合計15億ドルがNGOを含めた援助機関より拠出された(2002年8月現在)。国別・機関別にみると、米国5億3000万ドル、日本1億1600万ドル、欧州連合(EU)1億2300万ドル、英国1億1300万ドル、ドイツ8800万ドル、世界銀行9600万ドルとなっている。東京会議で表明された資金協力の借款部分は、ローンは受けないとするアフガニスタン政府の方針との整合性が取れず、調査団がアフガニスタンを訪れた時点では停止していた。

数字の上では多額の資金が既に供与されているが、調査期間中アフガニスタン政府より十分な開発援助資金がアフガニスタン政府に届いていないとの不満を耳にした。供与国の多くは、アフガニスタン政府が復興計画は有しているものの、実施のための能力が未だ不十分であるとみており、政府の行政能力の強化に重点を置いている。また本格的な支援は政治的安定および治安確保が前提であると認識している。そのため、アフガニスタン農村部への直接的な援助は、地方にて活発な活動をしているNGOを通じた支援、あるいはUNCHR、UNICEF等の国際機関が主導権を持った人道的な支援が中心となっている。カブール市内における、NGO、国際機関の活発な活動はそれらを裏付けるものであった。

4. 中央行政機関の現状

調査団はカブールにて関係省庁および国際機関と意見交換、情報収集を行った。農業農村開発分野における関係省庁は、灌漑水資源環境省、農業省、地方開発省の3省で、面談した大臣、副大臣は、NGOでの経験、欧米での留学・実務経験を持つものが多く、英語も堪能で、国際的な開発のトレンドを持ち合わせている。各省にはまとめられたデータは無く、事業実施あるいは政策策定に関する十分な基礎情報はないが、各省の部局長レベルの人間は、我々の質問に対する受け答えの早さとその内容から各省の業務に関して多くの知識と経験を持つものだと推測できた。意見交換を行った範囲内で、省庁間の連携は弱く政府として全体としてのまとまりはないものの、各省の組織は予想以上にしっかりしているという印象である。現在は、活動予算がないため、職員の給料は滞り、省としての役割を十分に果たせていないが、国の発展を真剣に考える姿勢が伺え、予算と的確なアドバイスさえあれば、本来の機能を十分発揮できる組織ではないかと感じた。

5. 農業生産活動の現状

関係者との意見交換、情報収集の場では、常に水不足の話題が出され、実際に調査団が訪れた地方部の河川、水路、農地の状況を見ても旱魃被害の状況の深刻さが確認できた。アフガニスタンの農業生産活動は土地という要素よりも水という要素に制限されておりその状況下で伝統的に農業を続けている農民の節水に関する意識は高いと感じた。これは畝を高く作り地形に合わせて農地を細分化している彼らの農地から推測できた。

また、古くから政府の援助を頼りにせず自分達で水源を確保してきた彼らの歴史も感じることができた。特に20数年に及ぶ混乱期には全く政府の援助を受けなかったと聞いている。カンダハールでは、アメリカの援助で作られた大規模な灌漑施設があり、老朽化と水不足のため8月の時点で全く使われていなかったが、その横で、彼ら自身の手で建設した井戸を用いて農業を営んでいた。

さらに、彼らの農家経営感覚の鋭さも垣間見ることができた。マーケットに並べられた農作物の多様さは、流通システムが成熟していることを物語っている。アフガニスタンは、遊牧民族の往来が盛んで、農村部でも古くから遊牧民を介した貿易が盛んに行われていた。自家消費用の小麦を除く全てが換金作物といわれ、カブール市近郊のロガールで調査した農地では、細分化された畑に豆、メイズ、瓜といった多様な作物が植えられていた。市場を意識した柔軟な作付けが行われていると推測できた。

彼らの農業生産活動は我々の想像以上に活発であり、現在のところ旱魃被害の緩和を重点に農村部への支援を考えれば、その効果は大きいと感じた。

ただ、水源開発には重要な問題が絡んでくる。アフガニスタンの主要河川の全てが国際河川であり、そのほとんどがアフガニスタン中部に広がるヒンドークシュ山脈からの雪解け水に起因していることは無視できない。周辺国との調整は不可欠である。

6. 今後の支援に関して

今後の支援は、治安状況を見つめながら、二つの資源の有効利用を視野にいれ実施していくべきである。二つの資源とは、水資源と人的資源である。

水に関しては上述の通り、マクロ的にみれば、国際的な水資源問題を孕むため政府レベルでの調整が、ミクロ的には施設の改修や水管理支援など節水灌漑の更なる推進が重要なテーマとなると思われる。

人的資源は経営感覚の鋭いと推測できるアフガニスタン国民と彼らの豊富な農業経験の有効利用を考えるべきである。民族が多様で、部族社会で生きる農家と遊牧民族で構成されるアフガニスタン農村部は、我々が容易に立ち入ることができないほど、複雑であると想像できる。どこまで我々の支援ができるのか、線引きを明確に行う必要がある。

支援の基礎となる農業活動と農村部の情報は、実証試験的な小規模プロジェクトを立ち上げるか、あるいは局部的に活動を続ける団体等と連携し、収集することが重要であると考える。そのための情報収集事業を新たに設けても良い。企業、団体、国を超えた積極的な情報交換が望まれる。

冒頭で治安状況に関して述べたが、面的な作業を、行う農業開発にとって、地雷の問題は無視できない。地雷の分布が我々の支援分野を決めるひとつのスクリーンになる。地雷を含めた治安情報の収集に関しては同様に、企業、団体、国を超えた連携が必要となる。

アフガニスタンは世界中の注目を集める地域であり、我々コンサルタントの活動をアピールする絶好の場所であると感じる。政府はアフガニスタン支援の成果を積極的に国民に対して発信し、国民が参加しやすいODAをアピールしている。NGOも同様に彼らの活動を宣伝し、書籍を出版するなどして積極的に広報している。

協会の立場として、積極的にアフガニスタンでこれまで蓄積された知識と経験を使って活動し得る我々コンサルタントのことを広く宣伝する必要があると考える。こうしたことが、我々若いコンサルタントの明るい未来に少なからず寄与するものと考える。

(了)



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