No.68 2003.1
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●●青年会議だより●●●
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ADCA活動記録

<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成14年11〜平成15年1月>
1
ハイチ
中央県セルカラソース地域農業農村総合開発計画
2 モザンビーク アンゴニア地域農業農村総合開発計画
3 アンゴラ カトゥンベラ・バレー灌漑システムリハビリ計画

青年会議だより
ミレニアム開発目標(MDGs)達成に向けて



2000年9月の国連総会において149カ国の国家元首の支持を得てミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)が採択されました。また、昨年8月から9月にかけて「持続可能な開発に関する世界サミット」:ヨハネスブルグサミットが開催され、更には本年10月には第3回アフリカ開発会議(TICADIII)が開催予定となっております。そこで、2003年新年号発刊に際し、MDGsへの貢献を念頭に置き、「水」および「アフリカ農業」注〕の2点からADCAが寄与できる事項に関し、青年会議幹事会杜の方々に各自の意見を自由に述べて頂きました。なお、これらの意見はあくまで個人的な観点から述べられておりますことご留意ください。

注)世界の中でもなぜアフリカ農業としたのかは、ヨハネスブノレグサミットでアフリカが注視された事、及び同サミットにおいて目本政府もアフリカを重点分野としている事による。

1.ミレニアム開発目標(MDGs)とは?

2000年9月ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットに参加した147の国家元首を含む189の加盟国は、21世紀の国際杜会の目標として国連ミレニアム宣言を採択しました。このミレニアム宣言は、平和と安全、開発と貧困、環境、人権とグッド・ガバナンス(良い統治)、アフリカの特別な二一ズなどを課題として掲げ、21世紀の国連の役割に関する明確な方向性を提示しました。そして、国連ミレニアム宣言と1990年代に開催された主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合し、一つの共通の枠組みとしてまとめられたものがミレニアム開発目標(MDGs: Mi11emium Deve1opment Goa1s)です。

MDGsは、2015年までに達成すべき目標として以下の8つを掲げています。

1.極度の貧困と飢餓の撲滅

ターゲット1:   2015年までに1目1ドル未満で生活する人口比率を半減させる。

ターゲット2:   2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を半減させる。

2.普遍的初等教育の達成

ターゲット3:   2015年までに、全ての子どもが男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。

3.ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上

ターゲット4:   初等・中等教育における男女格差の解消を2005年までには達成し、2015年までに全ての教育レベルにおける男女格差を解消する。

4.幼児死亡率の削減

ターゲット5:   2015年までに5歳未満児の死亡率を3分の2減少させる。

5.妊産婦の健康の改善

ターゲット6:   2015年までに妊産婦の死亡率を4分の3減少させる。

6.HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延防止

ターゲット7:   HIV/エイズの蔓延を2015年までに阻止し、その後減少させる。

ターゲット8:   マラリア及びその他の主要な疾病の発生を2015年までに阻止し、その後発生率を下げる。

7.環境の持続可能性の確保

ターゲット9:   持続可能な開発の原則を各国の政策や戦略に反映させ、環境資源の喪失を阻止し、回復を図る。

ターゲット10:   2015年までに、安全な飲料水を継続的に利用できない人々の害11合を半減する。

ターゲット11:   2020年までに、最低1億人のスラム居住者の生活を大幅に改善する。

8.開発のためのグローバルパートナーシツプの推進

ターゲット12:   開放的で、ノレールに基づいた、予測可能でかつ差別のない貿易及び金融システムのさらなる構築を推進する。

(グッド・ガバナンス《良い統治》、開発及び貧困削減に対する国内及び国際的な公約を含む。)

ターゲット13:   最貧国の特別な二一ズに取り組む。
            1) 最貧国からの輸入晶に対する無関税・無枠、

            2) 重債務貧困諸国に対する債務救済及び二国間債務の帳消しのための拡大プログラム

            3) 貧困削減に取り組む諸国に対するより寛大なODAの提供を含む)

ターゲット14:   内陸国及び小島喚開発途上国の特別な二一ズに取り組む。(バノレバドス・プログラム及び第22回国連総会の規定に基づき)

ターゲット15:   国内及び国際的な措置を通じて、開発途上国の債務問題に包括的に取り組み、

           債務を長期的に持続可能なものとする。

ターゲット16:   開発途上国と協力し、適切で生産性のある仕事を若者に提供するための戦路を策定・実施する。

ターゲット17:   製薬会杜と協力し、開発通ミ上国において、人々が安価で必須医薬品を入手・利用できるようにする。

ターゲット18:   民間セクターと協力し、特に情報・通信分野の新技術による利益が得られるようにする。

(UNDPのホームページより抜粋)

2.寄稿

寄稿1)

ミレニアム開発目標では、1990年を基準とし、2015年を期限とする貧困と飢餓の撲滅等に関する数値目標を定めている。現在、目標の達成度に関して様々な評価が行われており、発展途上国の中での達成度のばらつきが報告されている。中でもサブ・サハラ地域の遅れは深刻である。一例を挙げると、「飢餓の撲滅」という目標に対して、「はるかに遅れている、後退している」とされる40カ国のうちの半数以上の21カ国がサブ・サハラに属している。その要因として、過酷な自然条件が第一に挙げられる。アフリカ大陸の多くは乾燥・半乾燥気侯帯に位置し、FAOの報告によるとサブ・サハラの耕作可能な土地の約1/3は天水農業を行うには限界の降雨量で、残りの半分では飲料水でさえも満足に得られていないと指摘されている。そのため、サブ・サハラ地域を含むアフリカの国々において主要産業である農業を発展させるためには、限られた水資源の有効利用が鍵となっている。

一方、近年JICAで開発調査に引き続き実施されている実証調査では、開発計画の実証および修正を行うのと同時に、現地の農民のキャパシティ・ビルディングを行っている。ヨハネスブルグサミットで「人づくり」を重点項目として挙げているように、農業技術指導を通じた農民のキャパシティ・ビルディングは、今後益々重要になっていくであろう。

私は、このようにアフリカ開発に関する議論が高まっている中で、タンザニア国で実施中の実証調査に携わる機会を得た。その際に、私は量・質ともに厳しい農業用水を取り巻く状況を目の当たりにし、農業技術指導を通じて、わずかではあるが農民の意識の向上を

実感することができた。我々はこれまで農業基盤整備において多くの経験を蓄積してきており、また最近は農民のキャパシティ・ビルディングにも取り組み始めている。今後我々は益々アフリカの農業の発展に貢献ができると考える。

2003年10月に開催予定の第3回アフリカ開発会議に向け、様々な分野でアフリカ開発に関する議論が行われるに際し、我々もアフリカ開発の一翼を担っている立場として、積極的にその議論に加わっていかなければならない。一つの方法として、ADCAのインターネットのホームページを充実させることにより、我々の活動を広く世間にアピールし、同時にアフリカを中心に活動しているNGO等からの反響を知ることが出来ると考えられる。

(日本技研 小林)

寄稿2)

途上国各国で世銀・IMFの協力のもとに作成している貧困削減戦路ぺ一パー(PRSP)がMDGs目標の達成に向けてのツールとして、より明確に位置付けられ始めたという話が最近よく聞かれる。MDGsの目標のひとつとして「貧困人口比率の半減・飢餓人口比率の半減」がある。国民の大半が農業を生業としている国々にとっては、食が充実しなければどんな目標の達成も困難であるという意味において、その食を支える農業問題の解決は最重要課題と考えられる。では農業開発が具体的にどのようにMDGs目標達成に貢献するのだろうか。私が参加している東アフリカのタンザニア国における貧困農民を対象にした園芸開発調査とMDGsの関係を見ていく。PRSP先行国といわれているタンザニア国においても農業は重点分野である。現時点では未だ農業開発事業の実施に向けた予算配分は不十分であり、他セクター、特に教育、保健分野への配分が中心となっているが、農業が重点分野であることには変わりはなく2003年度予算での増加が期待されている。MDGsでは収入が1日US$1以下の人達の比率を2015年までに半減したいとしている。調査の中で行っている事業の対象農民の年間支出(収入に関する調査は困難であったため)は1999年の調査時点で平均約US$300(TShs.280,000)であった。導入された農業資機材のスキームや技術援助

を利用して農民が自らの収入を伸ばそうというものであり、うまくいけばこの事業そのものがMDGsの一目標の達成に貢献するものとなる。しかし現在のところ、農業技術面でのサポート不足や災害等で、農業資材は導入したものの充分な収入増を得ていない農民もいる。

その一方で、この調査は「いかに少ない投入で持続性のある開発が可能か」というモデルを模索するチャレンジングな側面を持っている。持続性とは、現在行われているプロジェクトの継続のみを指すのではなく、プロジェクト外においても何か苦境に直面したときにそれを克服するだけの能力を対象農民がどれだけ身につけたかどうかにより計られるものだと考える。この調査で行っている事業は少ない投入をすることで、それだけ農民の負担も大きいが、その投入を無駄にしないために行われる彼らの努力も大きいものとなり、彼らが自ら考え、行動を始める機会を多く与えることとなっている。彼らが自ら動き出すこと、それがつまり持続的な発展の第一歩であり、低投入によりうまく“離陸"できた農民にとっては良い結果(生産量や収入といった数字では不十分であるが)を生み出し始めている。こういった性急に定量的な結果を求めない姿勢でじっくりと進めていけばMDGsの目標年である2015年にはそれなりの結果がでているのではないだろうか。

(太陽コンサルタンツ羽石)

寄稿3)

単純に考えれば先進国が自らの取り分を減らして資源を再配分すればMDGsのかなりの部分はすぐにも達成可能かと思うが、そのようなことが行われると考えるのは現実的ではない。控えめに考えて先進国が現状を維持して目標をいかに達成するかを、水・アフリカに焦点を絞ってADCAの一員として考えるなら、まずは「極度の貧困と飢餓の撲滅」(ターゲット1&2)に対する直接の寄与として農業生産活動の拡大、生産性の向上が考えられる。とは言うものの「安全な飲料水を継続的に利用」する人の数も増やしてゆく(ターゲット10)のだから農業生産だけで水の消費を大幅に増やすわけには行かない。さらに、開発は「持続可能で環境資源の喪失を阻止」する(ターゲット9)のが原則なのでむやみに耕作地を増やすわけにもいかない。しかも「幼児死亡率の削減」(ターゲット4)、「妊産婦の健康の改善」(ターゲット5)、「疫病の蔓延防止」(ターゲット7&8)を図るのだから人口圧力は下がらず、

少なくとも一時的には上昇する。他のターゲットとの両立を図りつつ実現しようとするとなかなか難しい。

まずは先進国で化石エネノレギーの消費を節約してその分を途上国、特にアフリカに回すくらいはしないといけない。省エネの努力ぐらいは先進国にもできるだろう。途上国でもエネルギーはなるべく化石エネルギーにたよらず、こまめに再生可能エネルギーを使用して炭化水素を食糧増産のための原料に振り向けるべきであろう。そのための技術的、財政的支援は考えられる。自分自身については日常生活で省エネに努める必要がある。アフリカに関しては灌概用水の効率的な利用、生活用水の合理的な利用を図り、総合的な水使用量の増加を押さえた上で新たに水源を確保して行くことにより農業生産性の向上を目指すプロジェクトを考えることはできるだろう。耕作地は簡単に増やせないから、輸出作物の作付けを減らして食料増産に農地をまわせるよう「最貧国からの輸入品に対する無関税・無枠」(ターゲット13)を農産物以外のもので実現しないといけない。アフリカから目本まで輸送コストをかけて持って来るのは難しいので南南協力が必要になるが。

2015年に向けてできることから考えてみた。

(ドーコン森)

寄稿4)

これまでのアフリカに対する援助は、特に教育、保健衛生分野に対するものが主流であった。しかし、いかに住民参加による事業であっても、住人の生活手段の向上、生産の振興が伴わない杜会サービスの供給は持続的なものとして成立しない。従って、今後このような意味において、農業の振興はアフリカにとって大きな命題となると考える。

MDGsに示される8項目の目標を達成し持続するためには、行政体の脆弱なアフリカにおいて住人のプロジェクトヘの参加は必須のものであり、現在実施中の事業もこの視点に立脚し農村杜会調査、実証などを組み入れ実施されている。

農業生産における持続的発展を考えた場合に、第1段階として既存作物の生産性向上、次いで生産物の付加価値の増大による労働効果の増大が考えられる。この際には、換金作物の導入や高付加価値産品の生産などが検討されるが、この実現には市場・流通経路の形成、公正な取引システムなどの条件が必須となる。このように市場経済が参加できる経済主体が発展していなければ当事者による自足的な成長を継続することは難しく、経済主体の発展は政府の役割として地域の農業開発の際に検討すべき課題となってくる。

住民参加によるボトムアップと、行政からのトップダウンを両軸としなければ、開発援助は成立しない。

しかし、長らくの植民地支配とその後の援助供与によって行政組織が脆弱化しているアフリカ諸国において、プロジェクト実施後の援助資金が途絶えた後のマネージメントを行う管理者の資金、能力の向上が最大の課題となる。

カウンターパートヘの技術移転を常に技術協力の目標の一つとして行われる我が国援助においては、これらボトムアップとトップダウンの組み合わせを常に念頭に、プロジェクトの実施にあたらなければならないと考える。

(PCI弘重)

寄稿5)

人間開発を推進する8つの具体的なミレニアム開発目標が提案され、今後2015年までその達成に向けての努力が必要となるが、目標を達成できるか否かはその方法とアプローチが鍵となる。

MDGsで定められた目標は、低所得・飢餓・教育・ジェンダー・保健衛生・環境の各分野を幅広く網羅するものであるが、各セクター毎のアクションプランに基づく単独分野のプログラムを別々に実施するのみでは、その効果は短期的かっ非効率的なものになると考える。特に、各種民族が複雑に入り組み多様な民族形態を有するアフリカ諸国においては、これらセクター毎のプログラムと併行して、地域の特性を充分に把握した上で、農村を開発の中心と捉えた属地的な包括的農村地域開発のアプローチが必要と考える。

通常、貧困問題は単一の原因ではなく複数の問題が非常に密接に絡んで発生しているものであり、それら原因群の組み合わせは同一国内であっても地域・村落によって多種多様である。したがい、貧困を解消するためには、これら属地的な複数の課題を地域毎に包括

的に解決しなければならない。例えば、MDGsでは乳幼児死亡率の削減や妊産婦の健康改善が調われているが、この課題と「地域住民の所得の低さ」が密接に関連している地域の場合、保健衛生プログラムを全国レベルで画一的に実施しても、低所得という原因を解消しない限り、その効果は一時的なものに抑えられて持続的な効果は望めない。また、このアプローチに基づいて特定農村地域の貧困問題をセクター横断的に捉え、複数プログラムを同時期・同一地域に実施することにより、各ブログラム間の相乗効果を促し、より効率的な事業効果が期待できる。例えぱ、【ターゲット5】のr5歳乳幼児の死亡率減少」と【ターゲット1O】の「安全な飲料水の供給」とが密接に関連している地域では、この2つをターゲットと、する2プログラムをリンクさせて同時期・同農村に実施することにより、より大きな相乗効果が期待される。この様な理由から今後包括的農村地域開発のアプローチは必要であり、その展開とともに農業と農村の開発プロフェッショナルである私達ADCA会員の担う役割と責任もさらには大きくなるものと考える。一方、この様なセクター横断的な案件に幅広く対応できる様になるためには、私達は従来の農業開発というテリトリーから脱し、農村における幅広い二一ズと課題に対応できる人材・集団となるべく、さらなる目々の研鐘が必要となろう。

(日本工営 村上)



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