No.70 2003.7
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●●−お知らせ− ●●●
●●●  研修報告 ●●●
●●●青年会議だより●●●
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ADCA活動記録
<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成15年4月〜平成15年6月>
1
キルギス
チュ川流域ビッケツ市南方地域水利施設リハビリ・農業農村総合開発計画
2 フィリピン 環境配慮型全国国営灌漑施設調査
3 ドミニカ共和国 アグリポI農業開発リハビリ計画       
4 メキシコ
コリマ州農村開発調査
5 カザフスタン 南カザフスタン州農業農村活性化計画
6 キルギス 農業農村インフラ・家畜繁殖改善計画
7 エクアドル モレナ・サンチャゴ県農村開発調査
8 ミャンマー 市場経済に適応する農業生産と農村社会の構造調整計画
9 フィリピン 東ネグロス州タムラン定住促進地域総合開発計画
10 ベトナム バビ地区モデル農村開発計画

- お知らせ -
ADCAの新体制



去る5月27日開催の第27回通常総会および第52回理事会において下記のとおり新役員(任期2年間)が選任されました。

 

職 名
氏 名
新/再任
会 長
佐藤 昭郎
再 任
副会長
久野 格彦
再 任
専務理事
的場 泰信
再 任
理 事
今川 幸雄
再 任
理 事
小島 莊明
再 任
理 事
和田 勝義
再 任
理 事
前   迪

新 任

理 事
垣内 勝弘
新 任
監 事
柳原 武男
再 任
監 事
横澤  誠
新 任



ADCA個人参加専門部会の創設

平成15年度からADCAでは個人参加専門部会を設置し、ADCA活動に賛同する個人部員(以下部員という)の参加を求め、ADCA活動に関する知識の普及とADCA事業の推進を図ることと致しました。

部員として参加できる方は次の(1)〜(4)のいずれかの要件を満たす方です。

  (1) 開発途上国の農業・農村開発援助に携わる方

  (2) 開発途上国の開発援助事業に携わる方

  (3) (1)又は(2)に関して、概ね8年以上の実務経験またはそれに相当する経験を有する方

  (4) 当協会会員企業および賛助会員企業の社員の方

会費は年間1万円です。部員はADCAニュースの配布を受けることができます。

尚、申し込み方法等詳細については当協会までお問い合わせ下さい。


研修報告

平成15年度第1回プロジェクトマネージャー研修

PCM手法評価・モニタリング

6月10日より4日間、新橋アネックス会議室にて平成15年度第1回プロジェクトマネージャー研修「PCM手法(評価・モニタリング)」が開催された。モデレータは?国際マネジメントシステム研究所の花田重義氏にお願いした。ISOやプロジェクトマネージメントの考えを取り入れたADCA作成のテキストと農業・農村開発案件の演習事例とを用いて行われた研修には、正会員・賛助会員より合計9名が参加した。

研修終了後に行われたアンケート結果では、研修への参加理由として、JICA、JBICが実施している評価業務への理解を上げている受講生が最も多数であった。「PCM手法による評価・モニタリングを良く理解できたか」という質問に対しては、アンケートを回答した8名のうち7名が非常によく理解できた、あるいは理解できたと回答した。また、「研修で得た知識は今後の業務に活用できるか」との問いに対しては、約6割の受講者が、「活用できる」とした。残りの受講者は、活用には更なる経験が必要と回答している。さらに「活用できる場面はどこか」という問いに対して、JICA、JBICの評価業務に加えて、全ての業務に応用できると答えた参加者が複数存在した。

研修で用いたテキスト、事例に関するコメントとして、実際の業務を更にイメージできるように具体的な事例を多数載せてほしいとの意見が出された。また、演習事例の内容がかなり専門的で複雑なのに触れ、実際の案件に近く事例にふさわしいという意見がある半面、複雑すぎて参加者による理解度が違いすぎる、研修初日に事例に関する認識を統一する手段を講じるべきであるとの意見が出された。今後の課題としたい。

ADCAは本年度中に、PCM初級研修(1回)、中級研修(1回)を実施する予定である。


青年会議だより

第3回世界水フォーラム参加報告

「議論から具体的な行動を実現する会議」の成果は・・・

社団法人海外農業開発コンサルタンツ協会
事務局 主任技師 山岡 茂樹
shigeki-yamaoka@adca.or.jp


1. はじめに

第3回世界水フォーラム(WWF3)は、京都、滋賀、大阪の3都市で、2003年3月16日〜23日まで開催された。「開かれたフォーラム」を理念のひとつに掲げた今回のフォーラムには、2万人以上が参加し、水にまつわる300以上の分科会が開催され、「ひとりひとりが作る会議」が行われた。途上国における水資源開発、水分野への支援のあり方に大きな影響を与える本フォーラムの注目度は高く、発展途上国、先進国から国際機関関係者、NGO、技術者、研究者、先住民、女性、子供、農民、国会議員などの利害関係者が多数参加した。議論の成果と同様に決定までのプロセスを重視する主催者は、そのような持続的に発展可能な社会を実現する主体者の全てがフォーラムに参加できたことを評価している。

さて、WWF3は、グローバルな水問題を議論する場として国連機関や世界銀行でつくる世界水会議(WWC)の提唱で始まり、3年に1度、「国連水の日(3月22日)」を含む期間に開催されている。第1回はマラケシュ(モロッコ)で、第2回はハーグ(オランダ)で開催され、第3回目が琵琶湖淀川水系の各都市となった。2000年3月に開催されたハーグでの第2回世界水フォーラムでは、25年後の水を取り巻く状況や、人類が取るべき行動を多様な面から検討した「世界水ビジョン」が発表された。同時に閣僚級会議にて採択された「ハーグ宣言」で、水問題解決への政策指針として、基本的なニーズの充足、食糧供給の確保、生態系の保全、水資源の分配、リスク管理、水の価値評価、賢明な水管理の7つの課題(Challenge)が提唱された。

2. フォーラムでの主な議題と成果

第3回世界水フォーラムでは、「議論から具体的な行動を実現する会議へ」を合言葉に「世界水ビジョン」の提案をいかに実行に移すのかが焦点となり、水危機(水不足や水質汚染など)を克服するための手段について議論が深められた。そのなかで具体的な「行動」のためには、事業の資金が何よりも重要との認識で、まず資金の調達方法に注目が集まった。そして資金をベースとした農業、環境、洪水などの各セクターが取るべき「行動」については、テーマ毎の分科会で主要な課題が明らかにされたのち、「提言」と共にまとめられた。3月23日に発表された「閣僚宣言-琵琶湖・淀川流域からのメッセージ-」は、これらテーマ毎、地域毎の提言に留意されたものとなった。また、閣僚宣言と同時に、フォーラムの参加各国が取り組む世界の水問題解決のための具体的な行動が、「水行動集(Portfolio of Water Actions)」としてまとめられた。

農業セクターに関しては、日本の農業関連の専門家からアジアモンスーン地域の気候・農業の特異性が改めて主張され、灌漑農業(特に水田)に対する一方的な批判をかわす努力がなされた。このような地域毎の特性は、「地域の日」と題された特別プログラムを開催することでも強調された。

また、世界で水の価値が経済的な価値に傾注しているなか、水のフェスティバル「水のえん2003」が開催され、文化的な価値を評価しようとする動きも見られた。これも今回のフォーラムの特徴といえる。

以下、最も注目が集まったテーマのひとつである「水事業への資金調達」と、農業開発に関する「水と農業」について、今回のフォーラムにおける議論内容を簡単に紹介したい。

3. 水事業への資金調達

第2回世界水フォーラムでは、世界水ビジョンのなかで水を「経済的財貨」と位置づけ、「水への投資の大幅増加」「価格設定」の必要性を強調した。それ以来、水への投資に関して、元IMF専務理事のマイケル・カムドッシュ氏を議長とするパネルが設立され、議論が重ねられた。そのパネルの成果品として本フォーラムの直前に出された「カムドッシュ報告」では、水問題が深刻な発展途上国の場合、安全な水供給施設や下水道の整備には現行投資額の倍以上、1,800億ドルが必要と試算された。それは公的資金に加え、900億ドルにも上る民間資金の導入を求めるものであった。

本フォーラムで開催された「官民の連携」、「水施設への資金調達」をテーマとした分科会では、この報告を受けて、水の価値の捉え方や、水施設への資金調達方法がNGOを交えて議論された。水は人の権利であり民間企業のビジネスの道具ではないと主張するNGOと、民間企業による効率的な水事業の運営を主張するWWC、世銀などとで意見の対立が続いた。

現在フランス、ドイツやスペイン、米国の一部の州でも水道事業の民営化が進んでおり、途上国でも、世銀により上下水道建設の際の融資の条件とされたことで民営化が進んでいる。世銀はそれらの動きを衛生的な水をより多くの人に供給する第一歩であるとしている。

しかし、民営水道の市場は、フランスとドイツの国際水企業3社による寡占化が進んでおり、途上国で支援活動に携わるNGOの多くは、「一方的な値上げや貧困地域への供給停止などの弊害が途上国では起きている」と報告、「経済のグローバル化により、富の集中が発生するため、多国籍企業による水道事業の民営化は、逆に途上国における貧困層の拡大につながる」と批判した。

一部の過激なNGOは分科会をボイコットし、演台を占拠して、会議の進行を妨げる場面も見られた。

このように分科会での激しい議論に留意して、閣僚宣言文には、「貧困者の利益の保護を特に強調し、公益を保護するために公的な管理と法的な枠組みを確保すること」が述べられた。その上で「国家の政策と優先度に沿った形で、民間部門の参加を含むすべての資金調達手段を探求すること、そのために異なる関係者が関与する官民パートナーシップという新しいメカニズムを開発すること」が盛り込まれた。

民営化推進派と反対派の主張の対立は、水の価値をどう捉えるのか、という概念レベルで存在し、合意には程遠い。ある分科会では、水道料金の設定を適切な累進性にすることで、人権と経済性を同時に確保することができると主張した。

4. 水と農業

フォーラム全体が水の利用に関して、どちらかというと「飲料水」に優先順位を置いた議論を続けるあいだ、世界の水使用量の7割を占め、その効率性の向上を期待される農業用水に関しては「水と食糧・環境」と「農業、食糧と水」という2つの大きなテーマで議論が深められた。また、第2回目まではなかった農業関係閣僚が集まる「水と食と農」大臣会議もフォーラムの特別プログラムとして農林水産省、FAOの共催で開かれた。

「水と食糧・環境」の分科会では、食料増産の必要性と、灌漑による環境悪化に注目が集まり、両者の主張の格差が明確になった。環境分野の専門家は、大規模灌漑による影響で流入水量が減っているアラル海問題、黄河で起きている「断流」問題、塩害、肥料による地下水汚染など農業による環境破壊を指摘し、現在も河川が消滅しつつある現状を述べた。その事実に基づいて、生態系維持のために河川水や地下水の取水量を抑える必要性が訴えられた。一方農業では、環境の持続性は認識しつつ、今後の人口増加に伴う農業生産量向上の必要性から判断し、更に農業用水が必要になるであろうとした。農業と環境とのバランスは重要であるとの認識は両者で確認できたが、「行動」のベースとなる適切な指標、基準を示すまでには至らず、両者で更なるダイアログを進めることが分科会の成果として出された。また流域単位で環境、農業を考えることが重要であること、環境・社会・経済・政治の各分野を取り込んだ仮想貿易(特に食糧と繊維)の概念構築をさらに進めることが決められた。

閣僚宣言では、分科会での成果に留意し、「水は食糧生産・経済成長・環境の持続性を含む多面的な役割を引き続きになっていくべきである」とうたわれ、「持続的でない水管理を削減し、農業用水の効率改善のためにあらゆる努力を行うべきである」と述べられた。

「農業、食糧と水」をテーマにした分科会は、19日、20日に開催された。そのオープニングでイアン・ジョンソン世銀副総裁は水と農業は開発になくてはならないもので、とくに発展途上国において農業は成長の核であるとし、農業の重要性を述べた。また、アブドウラーICID会長は、今後の年2.5%の生産量の増加が必要であるにもかかわらず、近年灌漑分野への投資が減少していることを指摘した。分科会でも、環境のための水、飲料水を確保するために灌漑効率を上げることは必要で、そのためにも農業分野への投資を増加させる必要があるとされた。

閣僚宣言文には「効果的かつ公平な水利用と水管理、ならびに必要な灌漑の拡大を通じて、近隣コミュニティーベースの開発を促進すること」や「需要主導型の水管理手段として、農業用水管理の向上のための革新的で戦略的な投資、研究、開発と国際協調を奨励すること」などが盛り込まれた。

これまで畑作、乾燥地農業に重点が置かれ、あまり注目されてこなかった水田稲作に関しては、食糧生産だけでなく、水の循環や生物の多様性、文化などへの多面的な機能を持つことが改めて強調された。日本、アジアの農業関係の専門家は、灌漑の多様性を訴え、「水の無駄遣い」と一部の団体から批判されるアジアの水田農業を擁護した。このような働きかけにより、「世界には多様な農業形態や農業経済のあり方が発展してきたことを踏まえる」との文章が、閣僚宣言に入れられた。

またフォーラム期間中JBIC、JICAは農業開発に焦点を当てたセミナーを開催した。日本政府の「農業」への関心は「飲み水」同様高いものであったことを追記する。

5. おわりに

第3回世界水フォーラムは、NGOや市民団体を排除した前回までとは異なり、多様な関係者の参加が実現した。数多くの分科会では一人一人が作るフォーラムが実践され、「分科会の開催者にとってのフォーラム」であった。数日間訪れた参加者はテーマが多く、同じテーマに対して正反対の意見を主張する分科会が同時並行で開催され、各分科会での成果をフォローするのに四苦八苦したものと思われる。

「議論から具体的な行動を実現する会議へ」というスローガンが存在したが、基盤となる資金調達に関しても具体性に欠け、「行動」へ直接つながる成果は少なかったように思える。しかし、世界の水議論のなかに、日本を含むアジアモンスーン地域の特徴が盛り込まれた点に関しては、成果が得られたと思う。

「水施設への資金調達」は、個人的には、将来の目標として民間資金の導入というターゲットが必要であると感じる。しかしながら、それを途上国で機能させ、水の効率利用が、将来目標とする貧困削減に正しくつながる仕組みを構築するためには、段階的な対応が必要である。システム無く強引に民営化を進めてもNGOが言うように、富の集中や貧困層の拡大などのゆがみや弊害が生じることは否定できない。水道事業・給水事業の民営化が加速すれば、次は農業用水に焦点があてられる可能性もある。水道事業民営化で作られると思われる水に対する概念や仕組みに、今後特に注意を払っていく必要がある。

今回のフォーラムではかなりハイレベルな協議が行われ、10年後あるいは25年後の水とのかかわりを身近にイメージできた部分も大きい。なによりも、国際会議へ参加する機会を得た日本の民間企業や、NGO、市民グループにとって、今後の活動をすすめる大きなインプットであったと思われた。

(了)

 主な参考資料
   ・ 京都新聞
   ・ 水フォーラム新聞
   ・ 国連 水発展報告書
   ・  Financing Water for All
   ・ セッション出席概要記録(中原通夫ADCA技術顧問)
   ・ 閣僚宣言 - 琵琶湖・淀川流域からのメッセージ -



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