No.72 2004.1
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●● 研修報告 ●●●
●●●青年会議だより●●●
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ADCA活動記録
<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成15年10月〜平成15年12月>
1
ベナン
沿岸地域農業開発調査
2 モザンビーク ザンベジア州持続的灌漑農業農村総合開発計画
3 エチオピア アワサ湖流域保全型農業農村開発計画
4 エチオピア
アファール州遊牧社会開発計画
5 タイ コク・イン・ヨム・ナン導水事業計画
6 フィリピン カガヤン川河岸段丘灌漑計画
7 オマーン 水資源開発・管理計画
8 スリランカ ラトナプラ調整池建設に伴うス国南部乾燥地域民生安定促進型農業開発計画


研修報告

平成15年度第二回プロジェクトマネージャー研修

- PCM手法(評価・モニタリング) -


さる平成15年11月25日から11月28日の4日間に渡り、農業土木会館6F 会議室にて、平成15年度第二回プロジェクトマネージャー研修 ‐PCM手法‐ (評価・モニタリング)を開催した。モデレータには?国際マネジメントシステム研究所の花田重義氏をお招きした。本研修にはADCA正会員・賛助会員より合計10名が参加し、グループ作業を通じてPCM手法によるモニタリング・評価手法及びプロジェクト管理手法を修得した。

■□ PCM研修の内容

住民参加型の開発手法として注目されているPCM手法は参加型計画立案手法と評価・モニタリング手法から構成されるが、ADCAのPCM研修ではプロジェクトの施工管理等に係るプロジェクトマネジメント手法に重点を置き、「Plan‐Do‐See」の一連の流れからプロジェクトの管理手法を修得することを目的としている。なお、本研修ではDAC(開発援助委員会)の動向を反映させて改訂したテキストと農業・農村開発案件の演習事例を使用した。

■□ 研修のまとめ

研修後に行ったアンケート調査では9割の受講者が研修に対し「非常に良く理解できた」「良く理解できた」と回答した。研修最終日に理解度確認テストを実施したが、受講者の平均は91点であり理解度の高さを示した結果となった。

また、研修で習得した知識は今後の業務に活用できるかとの質問に対しても9割から「非常に活用できる」「活用できる」との回答を得た。活用する場としては、

(1)プロジェクト運営(実施) (2)評価業務 (3)プロポーザル作成

が挙げられた。

多くの受講者が本研修を受講した理由として上記?〜?を挙げており、明確な目的を持った受講者に対して適切な研修が実施されたことを示すと共に、本研修が大きな成果を上げたことを示した。

 なお、アンケートでは研修内容に対し、初級研修(PCM手法‐計画・立案‐)の復習に時間を割いて欲しかった等の意見が挙がった。今後の研修についてはモデレータ育成コースの開催を求める声が複数見られた。今回は本年度最後の研修であるが、これらの意見を良く検討した上で来年度の研修を計画したい。


青年会議だより

「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインについて」

(青年会議勉強会報告)

2003年10月7日に国際協力銀行(JBIC)環境審査室の畑中邦夫審査室長を講師としてお迎えして、「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインについて」というタイトルでADCA講演会が開催されました。

JBICは、1999年3月より国際協力銀行の環境社会配慮ガイドラインの見直しを開始しました。その後、パブリック・コンサルテーションフォーラムの開催、ウェブサイト上でのパブリックコメントの募集等、透明性の高い検討プロセスを経て、2002年4月に「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を制定・公表しました。2002年10月より同ガイドラインの重要項目に関する施行、そして2003年10月より完全施行が開始されました。このような状況の中、ADCA講演会において、畑中室長には、JBICガイドラインの改訂の経緯、重要事項等についてご説明いただきました。

ここでは簡単に講演会の内容について紹介いたします。

1.改訂の経緯

  ・ 国際金融業務と海外経済協力業務のガイドラインを統合

  ・ 世界銀行やアジア開発銀行、OECD(経済協力開発機構)等国際的な議論との整合性(コモンアプローチの考え方の採用)

  ・ 各種フォーラム、意見交換会、インターネットを通じた、検討の過程の公開

2.JBIC環境社会配慮確認の基本方針

  ・環境社会配慮プロセスにおける地域住民、現地NGOを含むステークホルダーの参加の促進

  ・相手国の主権を尊重しつつ、相手国、借入人等との対話を重視

  ・「環境社会配慮」とあるように、社会環境への配慮をより重視(住民移転、HIV/AIDS等感染症対策、こどもの権利、先住民族・女性への配慮等を対象)

  ・積極的な情報公開

3.前のガイドラインとの主な変更点

  ・ カテゴリAの分類基準である、3つの特性(影響を及ぼしやすい、セクター・事業特性・地域)を具体的に例示

  ・ 情報公開法に則った情報公開を規定

  ・ EIA結果の現地関係者への公開、協議の義務付け

4.環境ガイドラインの紹介

(1)環境社会配慮確認にかかる基本的な考え方

(a) プロジェクト実施主体者による環境社会配慮の実施
(b) JBICによる環境社会配慮確認(スクリーニング→環境レビュー→モニタリング)
(c) 環境社会配慮確認に要する情報について

  ・ 借入人、プロジェクト実施主体者、相手国政府等、協調融資金融機関、ステークホルダーから情報入手

  ・ 協調融資の場合、協融行との情報交換

  ・ 必要に応じ、サイト実査、専門家からの意見聴取

(d) 適切性を確認するための基準

  ・ 現地基準を遵守し、国際的基準(国際機関地域機関、日本等先進国の基準、グッドプラクティス)を参照
  ・ 現地基準と国際的基準に大きな乖離がある場合には、相手国、プロジェクト実施主体者等との対話による、背景確認等の作業の実施

(e) 適切な環境社会配慮がなされない場合、融資を行わない可能性もある。

(2)環境社会配慮確認の手続き

 環境社会配慮の手続きのフロー図(円借款の場合)を下図に示します。

<円借款の場合のプロセス例>

次に、フロー図中に示されたキーワードのうち、4項目について説明を加えます。

(a) スクリーニング

  ・できるだけ早期にスクリーニングを行う。

(b) カテゴリ分け

(カテゴリA): 重大で望ましくない影響のあるプロジェクト

・ 特定セクターで大規模なもの

・ 大規模非自発的住民移転等の「特性」をもつもの

・ 原生林、少数民族居住地等「影響をうけやすい」地域に立地するもの

(カテゴリB): 影響がカテゴリAほど大きくないプロジェクト

(カテゴリC): 影響が最小限かあるいはまったくないと考えられるプロジェクト

・ JBIC支援額が10百万SDR(Special Drawing Right、特別引出権)相当円以下

・ 人材開発、国際収支支援、権益取得等

・ 機器等単体輸出、JBICの関与が小さいもの(5〜10%程度)

(カテゴリFI): あらかじめプロジェクトが特定されないTSL等

(c) カテゴリ別の環境レビュー

(カテゴリA): 環境アセスメント報告書の提出を求め、それに基づくレビューを実施する。

(カテゴリB): レビューの範囲はカテゴリAより狭く、環境アセスメント報告書は必須ではない。

(カテゴリC): 環境レビューは省略

(カテゴリFI): 金融仲介者等を通じて実質的にこのガイドラインで示す適切な環境社会配慮を確保

(d)モニタリング

・ カテゴリAおよびカテゴリBは一定期間モニタリング

  ・ 環境社会配慮が十分でない等の指摘があった場合には、借入人にその指摘内容を伝え、必要に応じプロジェクト実施主体者に適切な社会配慮がなされるよう求める。適切な対応が取られない場合には、融資契約に基づき貸付実行の停止もありうる。

  ・3層(事業実施主体、環境当局、JBIC)によるモニタリング

  ・ JBICのモニタリング内容

  ・ 個別プロジェクト毎に、項目・期間を決定

  ・ 原則融資期間を通じモニタリング

(3)情報公開

  ・情報公開の原則と守秘義務を両立

  ・融資契約締結前にスクリーニング情報の公開

  ・資契約締結後、環境レビュー結果をウェブサイトで公開

  ・現地で公開されていれば、日本国内で環境アセスメント報告書をコピー

  ・カテゴリAで要求される、環境アセスメント報告書の入手状況はウェブサイトで公開

(4)意思決定

  ・ 環境レビューの結果は意思決定に反映

  ・ 適切な環境社会配慮がなされていないと考えられる場合は、適切な配慮がなされるよう働きかける。

  ・ 適切な環境社会配慮がなされていない場合は、融資等を行わない。

  ・ 環境社会配慮が確実に実施されるよう、融資契約書にモニタリング義務、問題発生時のステークホルダーとの協議、貸付停止等の条件を盛り込むよう努力する。

意思決定のフロー図を以下に示します。

(5)ガイドラインの適切な実施・遵守の確保

ガイドライン不遵守に関する異議申し立てを受け付け、必要な措置を取る。

(6)ガイドラインの適用および見直し

・平成14年4月1日制定

・平成14年10月1日を目処に部分的に実施

・平成15年10月1日より施行

・5年以内に見直し

8.講演会での質疑応答

講演会での主な質疑応答の内容について、以下に紹介します。

Q1: 環境面でのプラスの影響はどのように評価しますか。

A1: プラスの影響は別途評価します。本ガイドラインの目的は、負の影響をいかにゼロに近づけるか、が目的です。

Q2: 「大規模」の定義について教えてください。

A2: 世界銀行では、200人以上の住民移転が伴うものを「大規模」と定義づけていますが、実際には相手国政府の基準、社会低影響に配慮し、協議しながら決めていきます。

Q3: 例えば、象のような保護すべき動植物が事業対象地区に存在する場合、事業実施は無理でしょうか。

A3: 即無理ということにはなりませんが、移転可能なもの、不可能なもの双方あると思います。代替案を十分検討する必要があります。

Q4: 環境レビューはどの程度時間をかけるのでしょうか。

A4: EIAの出来次第です。出来がよければ、1週間程度も有りうると思います。移転問題などは、EIAと別途基本計画を作成するのが一般的です。難しい問題であるため、別途調査が必要な場合もあります。

Q5: 3層モニタリング(事業実施主体、環境当局、JBICによるモニタリング)とありますが、常にこれら3者でモニタリングするという意味でしょうか。非効率ではないでしょうか。

A5: 常にこれら3者でモニタリングするという意味ではなく、必要に応じて関与するという意味です。基本的には、事業実施主体がモニタリングを主体的に実施し、環境当局は通常業務としてそのモニタリングの一部を担う場合もあれば、実施主体を特別に支援する場合もあるでしょう。JBICも当然実施主体のモニタリング状況を監視する責任はありますし、実施主体のモニタリングの評判が悪いときには直接実施したり、支援したりする可能性もありますが、よほどの場合でない限り直接関与することはないと考えます。

以上が、ADCA講演会「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドラインについて」の報告です。さらに詳細な情報を得たい方は、JBICのウェブサイトをご覧下さい。




JICA環境社会配慮ガイドラインの検討状況について

(青年会議からの情報提供)

現在、独立行政法人 国際協力機構(JICA)では、環境配慮ガイドラインの改定作業が行われています。2003年11月より2回にわたり、「JICA環境社会配慮ガイドラインフォローアップ委員会」(以下、フォローアップ委員会)が開催されました。このフォローアップ委員会は、一般参加者の参加を認めており、インターネット上でも、議論の結果を公開しています。

ここでは、先に紹介したJBICのガイドラインに関するADCA講演会における配布資料、2003年11月12日に開催された「JICA環境社会配慮ガイドライン第1回フォローアップ委員会」における配布資料、および2003年12月初旬時点でJICAのウェブサイトで公開されている資料をもとに、JBICのガイドラインとJICAで検討されているガイドラインとの比較をするとともに、制定までの予定について紹介いたします。

1.ガイドライン改定の背景および経過

JICAは、1990年から「環境配慮ガイドライン」を導入し、環境と地域社会に影響を及ぼす協力事業を対象に、調査の事前調査実施に当たって、スクリーニングとスコーピングを行ってきています。ガイドラインの制定から10年を経て、環境社会配慮の対象範囲と重要性が増大したこと、情報公開の必要性が生じたこと、等からガイドラインの見直しが必要となっていました。また、2002年4月にJBICが「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」を制定したのを受け、無償資金協力の環境社会配慮ガイドラインの改定の議論が高まっていました。

このような背景から、JICAは、「JICA環境社会配慮ガイドライン改定委員会」(以下、改定委員会)を設置し、2002年12月から2003年9月まで、19回の委員会を開催し、JICA環境社会配慮ガイドライン改定のための検討を重ねてきました。同委員会の成果は、「提言」として、2003年9月にJICAに提出されました。

JICAは改定委員会の提言を受け、2003年10月にJICA環境社会配慮ガイドライン第1案を作成しました。

引き続き、改定委員会からの提言が、JICAの作成するガイドラインに反映されていることを確認し、JICAに必要な助言を行うことを目的に、「JICA環境社会配慮ガイドラインフォローアップ委員会」(以下、フォローアップ委員会)が設置され、2003年11月に開催された第1回フォローアップ委員会で、ガイドライン第1案が検討されました。そこでの議論を受け、JICAはガイドライン第2案を作成し、同月に開催された第2回フォローアップ委員会で、さらに検討が加えられています。

2.JBICガイドラインとの比較

(1)共通点

2003年12月時点で公表されているJICAガイドライン(第2案)によると、「1.4 環境社会配慮の基本方針」において、重要事項として、下記の7項目が挙げられており、その方向性は、JBICガイドラインと大きく違いません。

1. 幅広い影響を配慮の対象とする。

2. 早期段階から環境社会配慮を実施する。

3. 協力事業完了以降にフォローアップを行う。

4. 協力事業の実施において説明責任を果たす。

5. ステークホルダーの参加を求める。

6. 情報公開を行う。

7. JICA の実施体制を強化する。

また、カテゴリー分けについても、JBICと共通する部分が多く見られます。スクリーニング様式は、JBICの様式を採用しています。その他、実施体制およびガイドラインの運用、改定、異議申し立て制度等、についてもJBICのガイドラインと同様のものとなっております。

ガイドライン改定のための検討のプロセスについても、透明性を心がける等、JBICの検討プロセスを踏襲していると見受けられます。

(2)相違点

1)意思決定

JBICおよびJICAとも、事業実施主体によって適切な環境社会配慮がなされていない場合、なされるよう事業実施主体に働きかけていくことを詠っています。

このような働きかけにもかかわらず、適切な環境社会配慮がなされないことが明らかになった場合、JBIC、JICAとも中止に向けた意思決定をすることなります。

その意思決定に関して、JBICとJICAとの間に多少違いがあるようです。

すなわち、JBICは、「適切な環境社会配慮がなされない場合には、融資等を実施しないこともありうる。」と記載しているのに対し、JICAは「このような対応を行っても、プロジェクトについて環境社会配慮が確保できないと判断する場合は、JICA は、協力事業を中止すべきことを意思決定し、外務省に提言する。」と記載しています。このように、JBICと比較して、JICAはより強い姿勢を示しているように見受けられます。

2)緊急時の措置

JICAはガイドライン(第2案)の中で、「緊急時の措置」について触れており、「自然災害の復旧や紛争後の復旧・復興支援などで環境社会配慮の手続きを実施する時間がないことが明らかな場合」には、「環境社会配慮に関し、早期の段階においてその方針や計画を審査諮問機関に諮問する。また、審査諮問機関の検討結果を情報公開する。」と記載しています。第1回フォローアップ委員会でJICAからは、この項目は、アフガニスタン、イラン等における平和復興のためのプロジェクトで、通常の環境社会配慮の手続きを踏んでいる時間的な余裕がない場合の手続きについて規定している、という説明がありました。

JBICのガイドラインでは、この項目は含まれていません。

JBICおよびJICAの取り扱うプロジェクトの種類(有償と無償)、規模の違いから、このような相違が生じたものと分析できます。また、ここ数年の緊迫した世界情勢を受けての記載とも受け取れます。

3.ガイドライン制定までの予定

・パブリックコメントの募集

2003年12月〜2004年2月

・パブリックコンサルテーションの開催

東京で2回、大阪で1回開催

・フォローアップ委員会

3月までにあと2回程度開催

・3月上旬にガイドライン完成

・2004年4月よりガイドラインが施行され、2004年度の要請案件から適用が開始されます。なお、2004年4月1日以前に要請がなされた案件についても、可能な項目については、この改定されたガイドラインが適用されることとなります。

以上が2003年12月初旬時点におけるJICA環境配慮ガイドラインの改訂状況に関する報告です。さらに情報を得たい方は、JICAのウェブサイトをご覧になってください。


(文責:日本技研(株) 小林慶一郎)



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