No.73 2004.4
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●●国別調査報告●●●
●●●青年会議だより●●●
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ADCA活動記録
<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成16年1月〜平成16年3月>
1
フィリピン
国営灌漑地区施設維持管理技術支援計画
2 フィリピン 共同灌漑地区自立的運営計画
3 エジプト 西デルタ地域農業排水再利用計画
4 エジプト
農業機械訓練・貸出しセンター設立計画
5 エジプト 上エジプト灌漑施設改修計画
6 イラン ケルマン州バム地区地震被害農村インフラ復旧計画
7 ベトナム カマウ省農業水資源総合開発計画
8 スリランカ マハベリシステムB灌漑計画
9 スリランカ ルヌガンウェラ流域農業・農村開発計画
10 ラオス ムアンナムタ県住民参加型農村総合開発計画
11 カンボディア 貧困削減に向けたオダ-ルミンチェイ州小規模農村総合開発計画
12 パキスタン 北西辺境州農業支援センター強化計画
13 タイ ASEANマイクロ灌漑センター計画
14 バングラデシュ 北部地域住民参加型小規模農村生活環境改善計画
15 アフガニスタン ナンガハール及びバルク州灌漑施設復旧・拡張計画


国別調査報告

国別調査報告

はじめに

ADCAでは1988年より国別農業・農村開発情報収集調査の実施を継続しており、途上国に関する農業・農村開発情報を提供することにより、多くのプロジェクトの形成に貢献してきた。平成15年度は、約20年に渡る内戦を終結させ、復興に向けた一歩を踏み出したスリランカを調査対象とした。

スリランカの情勢

スリランカの面積は6万6,000km2であり、北海道(7万8,000km2)よりやや小さい。人口は1,960万人で、その構成※はシンハラ人81.9%、タミル人9.4%、ムーア人8.0%となっている。

スリランカは以前から、民族・宗教等の相違から様々な対立の芽を内包していたが、シンハラ人とタミル人の対立が鮮明となったのは1948 年の独立後であり、1953年の「シンハラ語公用語法案」に代表される多数派のシンハラ人に対する優遇政策が採られるようになってからである。それに反発する少数派のタミル人とスリランカ政府の対立が顕在化し、1983 年にジャフナに於いてスリランカ政府軍兵士がLTTE(タミル・イーラム解放の虎)に殺害された事件を契機に全土でシンハラ人によるタミル人への暴動が発生した。以降、スリランカ政府とLTTEをはじめとするタミル人反政府組織との間でテロや戦闘が続発し、多数の死傷者、難民・国内避難民が発生し、国土も荒廃した。

その後、両者による内戦は約20年にも及んだが、2002 年2月に無期限停戦に合意し、同年9月より本格的な和平交渉を開始した。その後、和平プロセスは進展を見せていたが、2003年4月にタミル人を代表する組織であるLTTEがアメリカの和平交渉に対する姿勢を非難し、和平交渉から離脱した。調査時点では残念ながら交渉は再開されていなかったが、以前のようにテロや戦闘が行われることは無く、コロンボ市内も平穏であった。

しかし、北東部では停戦後も大量の地雷が残されており、避難民の帰還や農業の再開など復興の動きを阻んでいる。


日本の援助

停戦を受け、2003年6月に「スリランカの復興支援に関する東京会議」が開かれ、援助によって和平構築を実現するという壮大な実験が始められた。日本も今後3年間で最大10億ドルの拠出を約束している。

日本の対スリランカ援助方針は、(LTTEが和平交渉から降りている段階では)和平プロセスが軌道に乗るまで灌漑施設や道路の整備といった本格的な援助は実施しないとうものである。援助によって和平を実検するという大前提があるため、和平交渉が進展しない以上、援助のみ与えることはできず、現在は和平交渉の進展を鑑みながら本格的な援助の準備をしている段階である。地雷除去や医療・保健分野などの人道的援助は続けられている。また、進行中の案件は動いており、北東部では、ため池改修のプロジェクトが実施されている。

農業情勢

スリランカでは2,000年以上前から連珠ため池システムを網羅させ、12世紀の王パラクラマバフーの言葉「一滴の雨水といえども人間に活用されることなしに大海へ流れ出ることを許してはならない」との思想のもと、効率的な灌漑稲作を実践してきた。

最近は小麦の消費も増加しているが、依然スリランカの主食は日本と同様コメであり、コメの自給が大きな問題となっている。コメの単位収穫量も年々増加してきており、2002年には100%に達した。ただし、その理由は、

・降水量に恵まれた。

・北東部へ農民が戻り、耕作を再開した。

・品種改良。

である。未だ天水に頼って農業を営む農家が多いスリランカでは、降雨量がコメの収量に大きな影響を及ぼしており、天候次第では次年度の収量が減少することも十分推察される。ドライゾーンの未灌漑地では乾期の作付けは雨期の50%にしか満たないとのことである。

またこれまでLTTE(タミル・イーラム解放のトラ)支配地域では、中央政府とは別の体制が維持されており、言わばスリランカとは別の独立国家が存在していたようなものである。スリランカ政府から発表される統計資料も、LTTE支配地域のデータを加えていないものがほとんどである。LTTE支配地域はドライゾーンであり、内戦の影響でタンク(ため池)を始めとする灌漑施設が破壊・放棄され、農民の帰還が進んでいるものの農業の生産性は低下している。今後、LTTE支配地域を含め全スリランカのコメの自給率を算出した場合、100%を割り込むことが予想されるため、北東部や南部の貧困地域における農業支援が重要となる。

コメの自給率については別の側面もある。スリランカのコメは特に品質の面から国際競争力を持たない。今後、自給率100%を越えた状態が続くとコメの余剰感が高まり、米価が下落してしまう。そうすると農家収入が減少し、貧困を増幅させる原因にもなりかねない。

スリランカの農民は日本と同様にコメに対して強い拘りがあり、野菜等への転作が遅々として進んでいない。今後、特に未灌漑地では、マーケティングを向上させるなど畑作振興を推進していくことが必要であろう。

今後のスリランカ支援

スリランカ支援に必要なものとして「南北のバランス」が挙げられる。現在人々の注目は内戦の影響が痛ましい北東部の復興にあるが、南部の降水の少ない地域も北東部と同様かそれ以上に貧困に喘いでいる。シンハラ人の中には北東部(スリランカ・タミル人)にばかり援助が行くことを嫌悪し、それを政治的に利用する集団も存在する。実際、日本大使館にもシンハラ民族主義の政党によるデモが来ているとのことである。

停戦が実現し、和平プロセスが進行中だが20年に及ぶ内戦と頻発したテロ活動により、シンハラ人とタミル人の間には簡単には埋められない深い溝があり、援助についても暫くは双方のバランスを考慮して実施すべきなのであろう。和平のための援助なのに、援助が和平を阻害するようであれば、本末転倒である。

また、調査中にイラクのフセイン元大統領拘束のニュースが流れた。イラクへの支援も重要であるが、日本政府はスリランカの5倍にあたる50億ドルの支援を表明している。その裏には石油資源の確保があるであろう。一つの国に援助を集中させることは援助のパッケージ化を進める上で必要であるが、援助に対して過剰に「国益」を追求するすると、スリランカのように持たざる国は浮上のきっかけを逸することになる。民族・宗教の立場の違いを乗り越えて、和平と共存を進めるスリランカへの支援は、平和国家を謳う日本とってその理念を体現するよい機会になるのではないか。

(了) 

社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会

事務局  福田 康

※ 出典「国際協力便覧 2003」国際協力銀行



青年会議だより

 青年会議勉強会報告(2003年12月2日)

「エジプトの灌漑事情とナイルデルタ水管理改善計画の概要」

2003年12月に今年5月までエジプト国灌漑水資源省で専門家としてご活躍され、6月より海外室に所属されている清野哲生班長をお招きし、最近のエジプトでの灌漑や水管理の事情等に関するADCA青年会議が開催されました。

ここでは簡単に勉強会での発表内容について紹介いたします。

1. エジプトの灌漑の歴史

過去エジプトでは「ベイスン灌漑」と呼ばれる、堤防で囲まれた耕地に洪水を導き、落水の後に蹄耕、播種し、洪水期前に収穫するという灌漑方法が行われていた。ベイスン灌漑は、高い持続性という長所を持つ一方、農業生産は不安定であった。

19世紀中頃から「大規模灌漑システム」への変革が始まり、1971年のアスワンハイダムの完成をもって、ベイスン灌漑は実質的な終焉を迎えた。

大規模灌漑システムの導入により、洪水の根絶と農業生産の拡大がもたらされた一方、a.塩分集積の顕在化、b.人口増加の拍車、c.施設維持管理経費の増大といった影響も出ており、その対応として、a.地下水位制御対策(暗渠排水)、b.農地面積拡張政策(砂漠開拓)、c.農民への管理移管(末端施設)、といった対応が取られている。

2. エジプトの水需要

2000年現在のエジプトの水需要は、農業が86.3%を占め、供給源としてはナイル河が73.3%を占めている。Saad & Faridの予測によると水需要は今後増え続ける傾向にある一方、最大の水供給源であるナイル河の利用可能水量は上流側のスーダンとの取り決めで555億トンと限られており、対応に迫られている。

現在の対応計画としては、以下のようなものがあげられる。

単位:億トン

項目 〜2017 〜2027

排水の再利用 38 -

再生可能地下水 34 -

水稲等の作付制限 30 -

灌漑改善事業(IIP) 25 -

深層地下水(化石水) 24 39

下水処理水の再利用 5 18

3. エジプトの灌漑システムの問題点

現在の灌漑システムの問題点としては、a.上流優先の不平等な水配分、b.サキア灌漑(集団)から個人灌漑への移行による?の拍車、c.低い灌漑効率、d.ローテーション灌漑(例:夏期4日通水、4日断水)の影響による過剰灌漑、が挙げられる。

4. 灌漑改善事業(IIP)(上記2.参照)

IIPでは、灌漑システム末端レベルでの農民参加による自主的水管理体制の確立を目的とし、a.農民の経費負担を前提とした末端灌漑施設の改善(ハード)、b.農民による水管理組織の設立と組織運営の確立(ソフト)を行う事となっている。

具体的な事業内容は、a.メスカの改善工事、b.水利組織の設立、c.デリバリーキャナルの改善工事、d.連続通水の適用、である。

これまでにも数箇所で実施されてきているが、a.不十分な合意形成、b.現地の状況を反映しない事業計画、c.出来上がった施設が十分な機能を発揮しない、d.水利組織が機能しない、e.不十分なトレーニング、f.工事完成後も連続通水を適用しない(できない)、g.圃場レベルでの灌漑効率改善の視点の欠如、といった問題点が挙がってきている。

5. ナイルデルタ水管理改善計画

5.1 目標

上記4.にて述べた現状を鑑み本プロジェクトの目標は以下の通りとなっている。

プロジェクト目標:

「灌漑改善事業」の効果的活効率的な実施のための全面的な農民参加に基づく改善手法がプロジェクトの成功により実証され、バハルヌール地区の末端での水不足が解消されると共に、農作物の生産性が向上する。

上位目標:

「灌漑改善事業」の効果的かつ効率的な実施のための改善手法がナイルデルタに普及され、農業生産性及び農家所得が向上する。

5.2 求められる成果

本プロジェクトに求められる成果は、

a.農民参加により水管理計画が作成される、b.農民参加により土地利用計画が作成される、c.灌漑施設の維持管理計画が作成される、d.3段階のレベルの農民水利組織が設立される、e.灌漑施設が改善される、f.圃場での適正な水利用が実現する、g.デリバリーキャナル以下の水管理が農民水利組織により実行される、

以上である。

5.3 実施手順

協力期間は2000年3月から2005年2月までの5年間。おおまかには、「調査」⇒「計画」⇒「実行」⇒「評価」と進めていく。各段階での具体的な内容は以下の通り。

調査:

・現況の把握、モニタリングシステムの構築

計画:

・農民参加による各種計画の作成

実行:

・農民水利組織の設立及び工事計画に対する同意徴集

・施設改善工事の実施

・農民水利組織の役員や灌漑改善事業担当者の研修

評価:

・改善後の状況の把握、達成度の評価

5.4 コンセプト

本プロジェクトのコンセプトとしては以下が挙げられる。

・農民参加

・工事開始までの合意形成の重視

・GISの活用

・他組織との連携

・圃場灌漑効率の改善

本プロジェクトは現在も継続中であり、どのような成果が出るか、今後が注目される。

青年会議勉強会報告(2004年1月15日)

「JICAの農業・農村開発」

2004年1月15日に国際協力機構(JICA)農業開発協力部部長の中川和夫氏、同広域調査員の西牧隆壯氏をお迎えして「JICAの農業・農村開発」というタイトルでADCA青年会議勉強会が行われました。

中川氏からは1.最近のJICAの動き(a.現場主義、b.業務の迅速化、c.貧困と人間復興、d.案件の選択と集中化、e.案件形成能力向上、d.組織改編)及び2.新たな事業展開の方向性について、西牧氏からは農業開発調査案件について講演していただきました。



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