No.74 2004.7
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●● 国別研修報告 ●●●
●●●青年会議だより●●●
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ADCA活動記録
<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成16年4月〜平成16年7月>
1
ウズベキスタン
フェルナガ運河改修及び灌漑施設整備計画
2 エジプト 農業機械訓練・貸出しセンター設立計画
3 エジプト 中エジプト地域総合水管理計画
4 エジプト
バハルヨセフ灌漑用水路マンシャット・エル・ダハブ堰改修計画
5 ミャンマー イラワジ川中流域乾燥地帯貧困解消灌漑事業計画
6 バングラデシュ 洪水条件不利地域における生計向上のための農村開発計画
7 インドネシア 中部・西部ジャワ州総合水源防災・農村開発事業
8 インドネシア 乾燥地域における貧困農家救済のための地下水源活用プログラム
9 バングラデシュ ディナジプール及びパンチャガール地域における5地区の灌漑施設改善計画
10 バングラデシュ チッタゴン丘陵地域荒廃地回復計画
11 シリア バラダ・アワジ流域農業用水利用管理開発計画
12 ラオス・タイ 北部東西回廊農業生産基盤支援計画


研修報告

農業・農村開発国別研修報告(スリランカ)

ADCAでは1988年より国別農業・農村開発情報収集調査の実施を継続しており、途上国に関する農業・農村開発情報を提供することにより、多くのプロジェクトの形成に貢献してきた。平成15年度は、約20年に渡る内戦を終結させ、復興に向けた一歩を踏み出したスリランカを調査対象とした。

ADCAでは平成4年度より、農業・農村開発国別研修を実施している。研修は、将来、農業・農村開発事業の拡大が期待される国から農業関係上級職員を招聘し、その国の農業・農村開発に関する現状や計画について説明を戴き、同時に会員企業との意見交換を行い、今後の農業・農村開発の発展に貢献することを目的としている。

平成15年度は、20年に亘る内戦を終結させ和平構築の道を歩み始めているスリランカを対象国とした。2003年6月に開催された「スリランカ復興開発に関する東京会議」では、スリランカに対し総計45億ドルの援助が約束されており、早急な農業農村開発案件の実施が望まれている。そこで、2004年2月2日〜10日の日程で同国水資源灌漑省のM.S. Wickramarachchi次官ならびにマハウェリ開発庁のP. Samaraweera局長を招聘した。

なお、Wicramarachchi次官は研修中の2月3日〜4日に東京で開催された国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)準備会議にも参加された。

ワークショップ

農林水産省、JICA、JBICへの表敬訪問後に開催されたワークショップには約30名が参加した。Wickramarachchi次官からはスリランカの水資源・灌漑開発の現状と問題点、計画中の水資源開発案件を縷説頂き、Samaraweera局長からはマハウェリ開発の歴史と現状及び、世銀が推進するマハウェリ開発庁解体の状況について御紹介頂いた。また、国際協力銀行(JBIC)の宮崎雅美参事役からもスリランカの農業セクターの現状分析とJBICの対スリランカ農業支援についての説明がなされた。質疑応答の後、懇親会へ移行し忌憚のない意見交換が行われた。

愛知用水視察

本研修期間中の2月6〜7日には愛知用水を訪れ、日本の灌漑システムを視察した。

6日の(独)水資源機構愛知用水総合事業部訪問では主に幹線水路の建設や維持管理方法、農業用水と工業・飲料用水とのアロケ、二期事業の進め方等について知見を深めた。7日には知多半島の愛知用水土地改良区を訪問し、土地改良区で実施されている末端圃場での水管理、水配分、料金徴収方法について意見交換を行った後、受益地を視察した。

日本の土地改良区は、世界銀行が提唱している「農民参加型灌漑管理(Participatory Irrigation Management:PIM)」のモデルとなっており、灌漑施設の維持管理組織としての評価も非常に高い。スリランカにおいても維持管理は重要な問題であり、両氏も積極的に質問されていた。


青年会議だより

 青年会議勉強会報告

「アフガニスタンの現状と展望」(2004年3月23日)

2004年3月23日に国際協力機構(JICA)前アフガニスタン所長 地曳隆紀氏をお招きして、「アフガニスタンの現状と展望」のタイトルでADCA青年会議勉強会が行われました。
地引氏からは、1.現状 2.復興支援 3.ベトナムとアフガニスタン 4.アフガニスタンのこれから - イラクとアフガニスタン - 政治 - 経済 について講演していただきました。

「国際化に伴う性能設計、発注方式のあり方」(2004年4月27日)

2004年4月27日に財団法人 日本農業土木総合研究所 専門研究員 中島賢二郎氏をお迎えして、「国際化に伴う性能設計、発注方式のあり方」というタイトルでADCA青年会議勉強会が行われました。

WTOの「貿易の技術的障害に関する協定(TBT協定)」、「政府調達協定」により、国内規格を国際規格に整合させることが義務づけられている。国際規格とは事実上ISO企画のことであり、そこでは性能照査型の基準が採用されている。一方、国内では設計施工基準が採用されている。そのため、現行の国内設計施工基準を従来の仕様規定基準から性能規定基準へ転換することが必要となり、これへの対応が急務となっている。

性能照査型の設計では、対象とする頭首工、用排水路、パイプライン等の構造物の機能を明らかにし、機能に応じた要求性能を決定しなければならない。さらに、その要求性能を満たすために信頼性設計法の考え方で設計を行うこととなる。

今回中島賢二郎氏に農業水利二期事業を例にとり、性能設計の課題について講演いただきましたので、その概要についてご紹介致します。

「性能設計の視点から見た農業水利二期事業」の概要

.背景

国内の農業水利事業は現在二期事業(更新事業)が主流で、機能低下している水利システムの改善を目的として行われている。機能低下について詳細に調べることが重要であり、まず何が問題であるかを把握するため、下記の事項等を確認する必要がある。

  • 必要な用水量が流れないのか
  • 取り壊して新設しなければならないのか
  • 農家レベルで何が不自由なのか
  • 管理上どのような問題があるのか 等

その上で、水路の機能が失われた原因・要因を探し、回復すべき機能を特定し、機能を達成すべき性能の水準を見極める必要がある。また、将来の性能設計の実施に向け、以下が求められる。

  • 適切な要求性能の水準を定める
  • 要求性能を確保する技術水準、要素技術の確立
  • 要求性能の達成可能性の証明

2.分析方法

適切な機能・要求性能を把握するための分析方法としては以下があげられる。

 (1) 既存資料の整理      事業誌、工事誌、土地改良事業計画書、設計施工指針等

 (2) 面接調査          用水配分、水管理実態、構造物の故障・修理実態等について

 (3) 現地調査・実態調査   流況調査、構造物現状、水位観測、管理記録等

 (4) 基礎資料の作成     地区内等高線図、水利縦断図、分水図

3.性能設計の事例

事例に基づいた、水利システムの改修に係る性能設計の手法

(1) 水利的課題(分水工の例)

ある水路から支線水路に分水する場合、分水後の流量減に合わせて、水路幅を縮小したり、水路底高を上昇させる「筍水路」の構造が用いられることがある。しかし、「筍水路」は定常状態を想定しており、農閑期など水を使用しない時期でも分水する必要があるなど配水の自由度が無く、効率的な水利用の観点から機能的問題を抱えていることがある。

望ましい分水構造としては分水部における余剰水を下流に流すための側溝余水吐の設置が考えられる(分水比率が小さい場合)。側溝余水吐を設置すれば、分水を行わず余剰水が発生しても、側溝を通じて下流に余剰水を導くことにより、水の有効利用が可能となる。

(2) 水理的課題(サイホンの例)

(水理機能上の問題点)

  • 管路の空気連行は管体の安全性を低下される
  • 普通期流量を流下させることが出来ない
  • 騒音(雷のような音)の発生飛沫の発生

(改善策)

  • 水理公式を見直す
  • 呑口をシャフト構造にする
  • 吐口に咳き上げ装置を設ける
  • 管路を2連構造にする

(3) 構造的課題(薄いコンクリートの凍結融解損傷の例)

コンクリート開水路の凍結融解損傷が水路改築の要因となっているケースを考えた場合、損傷の被害は目地部と天端に集中しており、その原因として、a.薄く背の高いコンクリートは天端にブリージング水が集中しやすい。b.目地材の省略、端部が平滑でない等の理由で発生したせん断クラックへの浸水、が挙げられる。これらの水が凍結融解を繰り返すことによりコンクリートが損傷を受ける。

a.、b.の原因への対策として以下が考えられる。

  • ブリージング水の処理技術向上
  • 目地材の適切な配置
  • 端面処理の技術向上(止水版をやめる)

また、二期事業では完成した施設の機能が回復したことを照査することが求められるため、機能検証技術の確立が必要である、コンクリートの凍結融解損傷のケースでは、例えば気泡間隔係数が指標として考えられるが、その指標が適切かどうかを検討する必要がある。

.性能設計を行うにあたっての課題

3.で性能設計の事例を挙げたが、実際にで性能設計を導入するにあたり、以下の課題を乗り越えなくてはならない。

(1) 基本的数値の把握
   流量測定(水位ではない)、年間雨量の集計、流量制御精度はいくらか、取水量の設定段階数はいくらか、供給主導・需要主導は本当に存在しているのか

(2) 旧施設の機能把握
   コンクリート強度、基礎地盤の状況、機械類の現況、取替理由

(3) 技術的課題
   分水システムの再構築、サイホン・落差工の水理設計の見直し、鉄筋コンクリートの耐久性に関する課題

(以  上)



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