No.77 2005.4
もくじ
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●●●ADCA活動記録●●●
●●●国別調査報告●●●
●●●青年会議だより●●●
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ADCA活動記録
<プロジェクト・ファインディング実施状況 平成17年1月〜平成17年3月>
1
インドネシア
津波被災地帯における農業・農村復興支援調査
2 スリランカ 津波被災地帯における農業・農村復興支援調査
3 インドネシア スマトラ北部地震被害灌漑地区緊急復旧調査
4 タイ
スマトラ沖大地震・津波による農業災害復興計画策定調査
5 タイ メイサイ流域の水資源・農業開発計画
6 カンボジア 小規模農民共同灌漑事業

国別調査報告

平成16年度国別農業・農村開発情報収集調査報告(インド)

はじめに

ADCAでは1988年度より農林水産省の補助金により国別農業・農村開発情報収集調査の実施を継続し、途上国の農業・農村開発に関する情報を提供することにより、多くのプロジェクト形成に貢献してきた。平成16年度は、円借款の受取額が上位に位置し、灌漑、水管理分野で世界的に注目をされているが、農業・農村開発の分野における日本のコンサルタンツの実績が少ないインドを調査対象とし、2005年1月16日から26日の11日間で実施した。

インドの情勢

インドの国土面積は約328.7万Km2で、日本の約9倍あり、人口は約10億4800万人で、インド・アーリア族、モンゴロイド族、ドラビダ族などの民族が存在する。また、800種あまりの言語、方言が存在している。

インドでは、2004年に行なわれた下院総選挙の結果、与党であったBJP党が敗北し、5月にマンモハン・シン首相の率いるコングレス党主導の連立政権が成立した。BJP党が敗北した原因には、ITを中心とする経済発展の一方で、2002年の干ばつが原因となって農業生産が減少し、農村住民の生活が苦しくなるとともに、貧富の格差が増し、経済発展の恩恵を充分に受けていないと感じた農村部の住民の票が、野党側に流れたためと言われている。

そのため、現政権は、基本的には従来の政策を引き継ぎながらも農村住民の意見を重視する必要があり、農業・農村を対象とした政策の実施に動いている。

また、総人口の70%以上が農村部で生活し、農村住民の約27%、おおよそ1億9千万人が貧困層に属し、全国では、おおよそ2億6千万人が貧困層に属しているとされている。

日本の援助

インドに対する日本の援助は、円借款が中心であり、2003年実績では、インドに対するODAの合計額325.76百万ドルの内304.66百万ドルが政府貸付等であり、90%以上を占めている。残りの10%以下が技術協力と無償資金協力になっている(ODA白書2004年版)。また、円借款の累積承認額の内訳を見るとエネルギー分野45%、運輸分野15%、産業分野12%、植林分野6.8%などとなっており、農業分野は3%程度とにとどまっている。また、円借款により実施されている農業・農村開発に関係する案件としては、大きく植林と灌漑に分けられる。

農業情勢

インドの農業生産が、GDPに占める割合は1993-1994年が28.4%であったが、2001-2002年には22.6%になり、減少傾向にある。しかし、インドの経済成長が依然として農業生産に大きく依存し、農業生産が干ばつなどにより低下するとインド全体の経済成長も鈍ると言われている。

作付面積は187.94百万ha(2000-2001年)で、そのうち米が23%、小麦が14%、豆類が11%、油量種子が13%、サトウキビが2.4%などとなっている。また、2000-01年における灌漑面積は、54.68百万haで耕地面積141.10百万haの約39%にあたる。

インドの主要な農業生産物としては、作付面積からもわかるように南部から東部を中心とする米や北東部を中心とする小麦、南部から西部を中心とするミレットなどの食用作物、豆類、油用の落花生、ヒマワリなどが上げられる。

1990-91年における灌漑手段としては、灌漑面積の約34%が水路による灌漑で最も広く、ついで管井戸による面積が32%、浅井戸による面積が20%となっている。

インドでは「緑の革命」により食糧の増産が可能となり、主要作物である米と小麦は、現在ほぼ自給を達成している。しかし、その人口の増加率に比べ、1970年代後半から農地面積はあまり増加していない。さらに、水資源利用については、年間の降水量が500mm以下の地域から1500mm以上ある地域まであるが、乾期は当然ながら雨期においても、安定的な生産には何らかの灌漑施設を必要とする地域が多い。しかし、灌漑施設は、イギリス統治時代に建設されたものも存在し、老朽化や維持管理が不十分で、効率が低下していると言われている。また、地下水の過剰な利用による塩害や地下水位の低下などが農地の問題として注目されている。また、農家あたりの農地面積が、1ha以下の農家が全農家数の61%を占め、農地の小規模化が問題となっている。

稲作においては、SRI (System of Rice Intensification, 稲集約栽培法)が政府関係者や農家の間で注目されている。この栽培方法は、乳苗の1本植えや株間を25cm以上にする、灌漑排水の交互実施、堆肥施用などを特徴とし、その結果、分けつ数が多く、根が発達し、収量が増加するとともに水使用量が減少する栽培法である。現在はまだ試験場や一部の農家などで採用されているだけのようであるが、その結果は収量が倍増のうえ、節水40%と著しい効果を上げている。政府関係者や農家も多いに興味を示しており、人口増加に対応する食糧増産の1手段として、今後積極的に普及される可能性がある。

今後のインド支援

前述のとおり、政権交代により農村部の住民に対する政策が注目されている。また、年間約1.8%、すなわち約1千800万人以上の人口が毎年増加するインドにおいて安定的、効率的に食糧を生産し、供給してくためには、今後も食糧増産が必要となる。そのような状況の中で農業、灌漑、農村の開発に対するニーズは高まっているため、日本としてもインドに対する農業・農村開発における支援を実施していく余地が充分残されている。

しかし、インドは、他の途上国と比較して技術力が非常に高く、資金面での問題を解決できれば、インド自身で実施できることが多い。例えば、インドの業者は大規模な灌漑施設を建設できる技術力を充分持っている。また、文化的な多様性に富み、複雑な社会を外部の人材が理解するのは容易ではない。そのような国において日本側は、インドにとってもメリットがある技術、日本が世界的に進んでいる分野で支援を行なっていく必要があり、さらに、日本側もインドから学びながら実施してく姿勢が大切になるのではないだろうか。

インドの農業・農村分野では、灌漑施設の新設が減少して、今後は既存施設の改修や維持管理の改善が求められる状況になっていると認識されている。また、限られた水資源を効率的に活用できる灌漑施設などの改善や組織の構築とその運営のノウハウも、安定的な農業生産において必要となってくる。そのような状況にありながら、工期が遅れがちなインドにおいて迅速に事業を実施するために、適切なプロジェクト管理、運営と工期内の事業実施において日本は支援できると考えられる。

また、日本には、世界的にも優れている土地改良区を組織し、農村地域の開発を行った経験がある。その現場において農業土木技術者は、土木だけでなく農学を基礎とした幅広い農業関係の知識を身に付けて農業土木だけでなく総合的に事業を監理し、水利組合の組織化や営農指導などにも係ってきた。そのため土木だけでなく、農業・農村という幅広い範囲を対象とした農村開発総合監理技術として日本の農業土木の技術、経験が活用でき、貧困削減のための農業農村開発に貢献できるのではないだろうか。

一方、稲栽培で注目されているSRIは、世界の各地で適用が試みられているが、世界的にもまだ検証の過程にあると言える。今後、インドネシアやフィリピン、カンボジア、マダガスカルなど各地で行なわれているSRIについて情報を収集するとともに、インドにおいても試験や改善を行い必要な条件や適地を見つけ、インドにあった栽培方法に修正していく必要がある。その点においてSRIは日本の従来の稲栽培方法とは異なり、馴染みが薄いものの、日本はレベルの高い稲作技術を持ち、世界各地で技術の指導や改善を行なってきた経験がある。従来の技術や知識と比較し、組み合わせることによってインドのコメ生産を栽培技術の面からも支援できる可能性があるのではないだろうか。


青年会議だより

青年会議勉強会報告

「世界の水問題と日本」(青年会議勉強会報告 2005年1月11日)

2005年1月11日に、(独)土木研究所ユネスコセンター設立推進本部上席研究員(前 国土交通省 河川局防災課 防災調整官)の廣木謙三氏をお迎えして、「世界の水問題と日本」というタイトルでADCA青年会議勉強会が実施されました。

廣木氏は2003年に日本で開催された第3回世界水フォーラムでは事務局次長を務めており、現在も世界の水問題の第一線でご活躍されています。水問題に関する豊富な情報量、深い認識に基づき、?世界と日本における水問題の紹介、?2004年の主な水に関する災害の紹介、?第3回世界水フォーラム以降の動き(第4回世界水フォーラムへ向けた動き)、についてご講演いただきました。ここでは、その概要を報告します。

1.世界と日本における水問題の紹介

  標記勉強会では、世界と日本における様々な水問題が紹介された。そのうちの一部を紹介する。

1) 逼迫する水資源量

  ・水需要の大幅な増加(1950〜1995年にかけて、人口増加率3倍に対し水需要量は6倍に増加)

  ・特に発展途上国において、水需要が逼迫している。

   (下図右の黒い部分が水ストレスが大幅に高まっている国々。アフリカ、中南米地域等の発展途上国に黒い部分が集中していることに注視。)

  

2) 水質等の水に関連する多くの問題

  病気、環境ホルモン、洪水被害、旱魃、地下水枯渇、地下水汚染、絶滅危惧種の保護、都市化による気候変動、水紛争、ダムと環境問題

3) Millennium Development Goal (MDG)

  人口の多い中国において水へのアクセスが大幅に改善されるため、目標達成の見込みは高い。最貧国が集中するアフリカでは達成が難しい。

4) 日本における水問題

・日本は食料等の輸入を通じて非常に多くの水資源を輸入している。(バーチャルウォーターの考え方)
・水道の民営化(日本では年間5.57兆円の市場。コンセッション方式による民間化が検討されている。本報の4.質疑応答に補足情報を掲載。)

 

2.2004年の主な水に関する災害

  2004年に日本を始め、世界中で発生した水に関する自然災害が紹介された。新潟県中越地震、スマトラ沖地震後の津波災害は、記憶に新しい。

  

3.第3回世界水フォーラム以降の動き

1) 第3回世界水フォーラムの成果

  ・水に関するあらゆるステークホルダーが集約した。

  ・農業用水についても十分な議論が出来た。

  ・水に関する会議のフォーマットを作った。

2) 第3回世界水フォーラム以降の水に関する議論

  1.国連のMDGの見直し(2005年9月)に向けて

・水と衛生に関する諮問委員会(通称橋本パネル)
国連アナン事務総長の打診を受けた橋本龍太郎氏を議長とする委員会。MDGの見直しに向けた具体的な活動と提言を行っている。2004年7月および12月に会合および作業部会が実施された。

・国連持続可能な開発委員会(Commission Sustainable Development)
4月下旬に実施される会議における議論が、9月の見直しにおけるたたき台となる。

  2.統合水資源管理(Integrated Water Resources Management:IWRM)

2002年ヨハネスブルグで実施された持続可能な開発に関する世界首脳会議で、「2005年までに各国は統合水資源管理計画ならびに水効率化計画を策定する」ことが国際目標として採択された。2004年12月東京において「統合水資源管理(IWRM)に関する国際会議」が開催され、IWRM 計画策定に向けた取り組みが行われている。

3) 2006年第4回世界水フォーラムに向けた動き

  主催国(メキシコ)が基調ペーパーを作成し、そこに挙げられた問題提起に基づく議論が展開される模様。日本では、日本水フォーラムがNPO団体として間もなく設立に至り、第4回水フォーラムに向けた活動を展開していく。

4.質疑応答

Q1.水道水の民営化の紹介でコンセッション方式 が紹介されているが、具体的にはどのような方式か。

A1.コンセッション方式とは、市町村に資産所有権を残し、民間事業者に経営全般を委託する方式のことである。例えば、水道の所有権は市町村が有するが、水道料金の徴収権は民間業者が有し、民間業者は徴収料に含まれる手数料より利益を得る。

Q2.日本は多くの工業製品を輸出している。バーチャルウォーターの議論において、工業製品の輸出による水の輸出について考慮することはできないのか。

A2.日本の水資源利用の7〜8割は農業用水であり、日本におけるバーチャルウォーターの議論は、農業用水に関する議論が中心となる。バーチャルウォーターに関する議論について、注意すべきは農業 v.s. 環境に関する議論、水資源を農業に利用すべきか、環境保全を重視し農業への利用を抑制すべきか、という議論である。発展途上国からは、農業のために水資源をもっと活用すべきと言う意見は非常に強い。2006年の第4回世界水フォーラムにおいても5つの主要テーマのうちの1つとして取り上げられる。

Q3.日本ではダムの開発を歓迎しない傾向にあるが、現在の世界の潮流はどのようになっているのか。

A3.徐々にダム等のハードも必要という議論に振り子が触れつつあると感じられる。第3回世界水フォーラムでは、ダムの推進に関する議論が活発に行われた。被援助国の立場では、圧倒的に水が必要であり、それが第3回世界水フォーラムでは大きな声となっていた。ODAを拠出する側である世界銀行も、お金をつける対象として水資源開発に注目をしつつある。今後JBICも追随する可能性はある。この動きは一種トレンドのようなもので、1年から1年半のうちに刻々と変化する。機会を逃さないためには、不断の事業の仕込みが必要ではないか。

5.最後に

日本は、ODAの宣伝をもっと工夫する必要がある。例えば、アフリカの水資源開発のおよそ半分は日本の援助に由来している。また、成功したプロジェクトも多く、Good Practiceとして大いに宣伝をすべきである。第4回世界水フォーラムのパンフレットにも様々なGood Practiceを掲載したいと考えており、ADCA会員各社からの情報提供をお願いしたい。



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