2006年巻頭言集

No.80 2006.1  (社)海外農業開発コンサルタンツ協会   会長 佐藤 昭郎
2006年の年頭にあたって

ADCA会員および賛助会員ならびに海外援助業務に携わる政府および関係機関の皆様、新年おめでとうございます。年頭にあたり2006年が皆様方にとりまして良い年となるよう祈念いたします。また、旧年中のADCAの活動に対しまして一方ならぬご協力ならびにご支持を頂き、深く感謝申し上げます。本年も倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げます。

さて、ここ何年かとは異なり日本経済の緩やかな回復基調の中で新年を迎えることができました。2006年度予算の政府原案においてODA予算は前年度に比べ減少したものの、円借款の事業量が増えるなど明るい兆しが少し見えてきました。日本政府は昨年7月のG8グレンイーグルズ・サミットで、ODA事業量の戦略的拡充を図るとして、今後5年間のODA事業量を100億ドル積み増すことを目指す、またアフリカ向けODAを今後3年間で倍増すると表明するなど日本の国際的プレゼンスも高まっています。

昨年9月の総選挙結果を受けて小泉内閣の構造改革は更に拍車がかかった感があります。昨年11月末の経済財政諮問会議で政策金融改革の基本方針が決定され、円借款の実施機関であるJBICについては、内閣官房長官の下に有識者からなる海外経済協力に関する検討会を設置し、戦略的援助政策を効率的に実施するため、他の援助機関との関係整理、援助政策を企画立案、実施する政府内体制のあり方を含めて総合的に検討し、今年度内に統合の具体的内容を決定するとされました。政策金融改革とは別次元の問題であるODAの政策立案、実施のあり方が検討されますが、ODA実施に関与しているコンサルタンツにも少なからぬ影響を及ぼすので、ADCAとしては今後の検討会の議論を注視していきたいと思います。

JICAは、2003年に独立行政法人化して以来、「現場主義」「人間の安全保障」「効果・効率、迅速性」を3つ柱のテーマとして事業と組織のあり方について改革を進めていますが、契約制度も見直されつつありコンサルタンツの業務内容も変わってきています。途上国援助においてコンサルタンツは蓄積した知見を基に途上国の発展に必要な技術やノウハウの提供、人材の育成や組織の強化等極めて重要な役割を果たしてきています。コンサルタンツの重要な役割を尊重し、その機能がフルに発揮できるような措置が講じられることが望まれます。

各コンサルタンツ企業においては、改革の流れを先取りして、ODAが効果的、効率的に機能し、途上国の発展に一層貢献し、コンサルタンツの国際的活動の強化推進に資するような技術の研鑚や新技術の導入、組織、体制の見直し等に努めることが必要であると思います。

ADCAが世界の動きに的確に対処し、かつ日本のODAの推進にこれまで以上に寄与できるよう関係者の皆様および関係機関とも協力しながら2006年が有意義な年となるように活動していきたいと思います。

平成18年1月


No.81 2006.7  農林水産省農村振興局設計課 海外土地改良技術室長  大田 武志
海外農業農村開発の新たな展開に向けて

本年4月の異動により海外土地改良技術室長を拝命いたしました。久しぶりに担当する海外業務であり、「一から勉強し直す」との思いで取り組んでおりますので、今後ともADCA会員ならびに関係各位のご指導とご支援をよろしくお願いいたします。

さて、わが国のODAは1954年の開始以来半世紀を過ぎ、これまでに約2,210億ドルを開発途上国への経済発展等のため供与してきました。その歩みを振り返ると、その時代毎のニーズに即して、1.援助の仕組みなどを整備した「体制整備期(コロンボ・プランへの加盟、専門家派遣の開始等)」、2.量的拡大を図った「計画的拡充期(構造改善局ODAの開始等)」、3.冷戦後の新しい国際環境下での「政策・理念充実期(ODA大綱・国別援助計画の策定等)」、4.そして、現下の国内での厳しい財政状況や「平和の構築」等国際社会の潮流をも踏まえた「新たな時代への対応期」の4つの時期に区分できます。

また、この間の農業農村開発分野での具体的な取り組み・成果としては、1.1977年度から実施しているプロジェクト形成のための基礎調査や情報整備、2.環境問題への対応の観点から砂漠化防止対策のための技術開発、3.農民参加による「村づくり」協力手法を開発、さらにその手法を活用して復興支援に対する協力を開始等々があり、これらは国内外で高い評価を得るとともに、JICA開発調査に適用されるなどの発展的な効果も十分に発揮しているものと考えています。

一方、わが国を含む先進国や国際機関等の長年におよぶ援助にもかかわらず、今もなお開発途上国を中心として栄養不足人口は約8億人、また貧困人口(1日1ドル未満で生活している人口)は約11億人とも言われており、大きな改善は見られない状況が続いています。加えて農業や農村の基盤となる土地(土壌)資源、水資源の劣化や開発途上国に集中する人口増加等の課題は、これら開発途上国の経済・社会状況を今後一層悪化させる大きな危険要因であり、このような事態への迅速かつ効率的、効果的な対応が強く求められています。巷間、厳しい財政状況下で、「ODAを拡充する必要があるのか」との議論もありますが、逆に開発途上国が直面する課題に目を向けた場合、「このような対応を抑制する余裕が、今あるのだろうか」との見識の方が、より説得力を持つように思えます。

 このような観点から、農林水産省農村振興局では、これまでのODA協力の実績・評価、開発途上国を取りまく状況の変化や新たな課題等を踏まえながら、今般、農業農村開発協力の「意義と目的」と「具体的な施策の方向」等を整理した「農業農村開発協力の展開方向〜貧困削減と農業農村の持続的発展をめざして〜」を取りまとめました。この中では、開発途上国における基幹産業である農業と生産・生活の場である農村の両者を支える農民、住民等に直接裨益する取り組み等に重点を置き、「人間の安全保障の実現」や「復興支援」等を新たな視点に加えています。今後、この展開方向に基づき農業農村開発協力を進めていくこととしておりますので、ADCAならびにADCA会員におかれましても、官民一体となったODAの推進に向けて一層のご協力をお願い申し上げます。

平成18年7月


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